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♪レッスンの引き出し 道具編

弓の毛のはなし

弓の毛の違いで 、弾きやすさが変わることをご存知でしょうか。
私が気に入っているのは、丸一商店が卸している「ルッキ」という馬毛です。
勧められて初めて張ったとき、”まるで弓を買い替えたみたい”と思いました。
職人さん(Sさん)は ”みな同じことを言うねん” と言いました。

 

それまで、弦や松脂をいろいろと買ってためしていましたが、やめてしまいました。
その馬毛が、衝撃的なほど弾きやすかったからです。
肩当て・顎当てを探しつくして、自分なりの結論 (※) に
辿り着いた時期だったこともありました。

(※) 2020.07.10 脚と足と、靴のはなし  をご覧ください。

 

ちなみに、
”まるで弓を買い替えたみたい” と言いましたが、

弓の買い替えによる弾きやすさアップは、馬毛の違いとは比べものにならないです。
あしからず。。

目次

(1)毛替えのタイミング

a)引っかかりが悪くなる
b)伸びる
c)黒ずむ、黄ばむ
d)切れて量が減る、かたよる

a)引っかかりが無くなった弓に、一度だけ遭遇したことがあります。
 アマチュアのずぼらさんな友人の弓でした。
 つるんつるんで、松脂をぬってもぬっても粉が毛に全然引っかからない。
 弓の毛が摩耗するってこういうことなんや、とビックリしました。

b)毛はだんだん伸びてきます。
 ネジをいっぱいまで巻いても、張りが十分ではなくなってきたりします。
 毛をゆるめないで片付けていると、毛が早く伸びきってしまい、ステ
 ィックにも負荷がかかります。

c)手で触れすぎると、脂で黒ずみます。
 触らなくても年月が経つと、静電気が塵や垢をひきよせ黒ずんだり
 黄ばんだりしてきます。

d)年月がたつと、経年劣化で切れやすくなります。
 しまっておいただけの弓の毛が、ボロボロになることもあります。
 漂白している毛も、切れやすいです。
 弾くときに切ってしまう場合は、切れないような弾き方を勉強しましょう。

(2)毛替えの値段について

毛替えの作業をする人に近いほど、安くなります。
大きな楽器店に預けるより 工房の職人さんにしてもらう方が安いのです。
楽器店に預けても、下請けの職人さんへ出していたりします。

通常のグレードだと、工房では5000円+税~が多く、楽器店では6000円
+税~ です。
その上のグレードは、工房では8000円+税~のことが多いですが、楽器
店との値段差はさらに広がります。
ルッキは8000円+税~です。

ただ楽器店でも、腕のいい誠実なスタッフさんがいることがあります。
職人さんでも、腕がイマイチだったり、えらそうだったり。
一様ではありません。

修繕になると、値段はぴんきりで、桁が違ってきます。
修繕が必要な事態になる前に、工房を訪ねて毛替えをしてもらい、良さ
そうな職人さんを探しておくのが
私のお勧めです。

楽器店と工房、その他のお店(ネットショップ等)の違いについて詳し
く知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

(3)馬毛の選び方

良い馬毛は、消耗しにくいことが多いようです。
ルッキもそうです。
高い毛を選んだ方が、結果的に節約になることもあります。

控えめな謙虚な職人さんほど、グレードの高い毛を勧めません。
楽器購入に際してもそうです。
だからといって、本当に良いものを勧めてくれないのも困りますが。。
私が、毛替え2回以上お世話になった職人さんは3人おられますが、
どの方も高いグレードの毛を積極的には勧めてくれません。

ルッキに惚れこんでいる私が、
”どうして他の方にもルッキを勧めないんですか?”と尋ねると、
”全てのお客さんがルッキにして良かった、と言ってくれるわけじゃ
ないんだよ” とおっしゃっていました。(Fさん)

また値段が高くても、いい毛とは限りません。
ルッキが無かったとき、ルッキと同じ値段のほかの毛にしてみましたが
その毛は5000円のと変わらなく感じました。

ルッキは引っかかりが粗い気がします。
ですのでチェロには向かないかもしれません。

このところ松脂はずっとベルナルデルを使っていたのですが、ふとクロ
ネコダークを使用してみたら、こちらの方がルッキには合っていました。
バイオリンに良く使われる松脂は、クロネコライト、ベルナルデル、ク
ロネコダークですが、書いた順に粒子が細かくなり粘りが強くなります。
楽器が大きく、音程が低くなるほど、粒子が細かくて粘りが強い松脂を
用います。

バイオリン・ビオラ・チェロの弓の毛は、基本的に同じラインナップ
から選びます。
しかしチェロの友人によれば、バイオリンはこの3種類から、チェロは
この2種類から選んでください、ということもあったそうです。
コントラバスは、厳密にいうと楽器のカテゴリがバイオリン・ビオラ・
チェロたちとは違い、弓の毛も違います。

実は「ルッキ」と同等か、それ以上に良かった馬毛が関東にあります。
問いあわせているので、情報が得られたらお知らせしますね。

(4)職人さんの毛替え作業

①仕入れた毛 > 使える毛

仕入れた毛束が、すべて使えるわけではありません。
うねってる毛、太すぎる細すぎる毛、品質の悪そうなものを目で見て
まびきます。
人間の髪の毛も、馬の尻尾も、先へ行くほど細くなります。
フルサイズの弓に必要な長さは、70cmほど。
長い尻尾であれば、70cmくらいまでは太さはさほど変わりませんが、
中には伸びてる途中の毛もあります。
70cmより手前で細くなっている毛は、まびかなければなりません。
分数バイオリンだと、必要な長さが短くなるため、短い尻尾の品種の
おうまさんの毛が使われます。
良心的な職人さんほど、間引く基準が厳しくなるのは言うまでもありません。

通常は毛先を弓先にもってきます。
が、半分は逆方向にするのがいいとか、何割かは逆にするとか、そうし
てみたら何故か弾きにくくなったとか、職人さんもいろいろ研究されて
いるようで、諸説あります。

②張る毛の量

弓の毛は、多すぎても少なすぎても弾きにくくなります。
私の経験でも、いちばん多かったときと少なかったときで、倍ほど違い
ました。
多かったのは、多いほど良心的との思い込みが職人さんに強かったから
と思います。
ヘッドに多くの毛を押し込みすぎていて、数日~数週間はティップの
境目でぷつぷつと毛が切れていました。
少なかったのは、コストパフォーマンスを上げようとしたのだと思います。

真に使い手のための毛替えをしようとする職人さんは、弾きやすさを
考えて量を調整してくれます。
ベストな量は、弓によって、弾く人によって、違います。

弓の毛が多いと、重心は先寄りに、少ないと元寄りになります。
弓の重心の標準的な位置は決まっており、重心が先寄りになっている
重い弓は、毛が少な目だと持ちやすくなります。
また弓の毛が多いと腰が柔らかくなり、少ないと強くなります。

私が以前使っていた弓は、重心が先よりで、腰が強すぎました。
いい弓はいい弓なんですけれど。
職人さん(Sさん)は、ティップの中をできる限り軽くし、フロッグに
チタンのかけらを入れてバランスを取ろうとしてくれました。
弓の毛は多めでしたが、それでも腰は強かったですね~。
Sさんは、海外の一流の演奏家がわざわざ渡航してくるほどの職人、
OKさんの孫弟子で、調整をすべき時期にきている楽器は”見たーわかる
(触らなくても)”と言います。

私が弓を探していた時、職人さん(Sさん)が候補に選んでくれたもの
には、満足の行くものがありませんでした。
先生が勧めてくれたものは、弾きやすさが違いました。
それで先生が勧めてくれたものを買いました。
弓はコレクションではなく道具です。
しかしそれは職人さん(OZさん)から見ると、必ずしも良い弓では
ないようでした。

③弓を預かる vs 預からない

工房で毛替えを依頼するときは、事前に予約をして、その場で1時間程
待っているあいだに作業をしてくれます。
また依頼する側がそれを希望すれば、一旦預けて、後日受け取りにくる
のも可能です。

預けない場合は、張りかえ後ドライヤーで軽く乾かし、(張るとき毛を
揃えるのに、水を含ませます)乾いたあとの不揃いな弓の毛を整えます。
下からアルコールランプの火であぶると、垂れさがっている毛が縮みます。
それから長すぎる毛、質の悪い毛を、切って取り除きます。

預かる職人さんもおられます。
自然乾燥したかったり、数時間後の状態を確認してから引き渡したいの
だと思います。
威厳を保ちたいのかな? と感じた工房もありました。

大多数の工房は、その場で弓を返してくれます。
預からない理由を聞いてみました。
”お客さんが困るやろ”
”預かっている間、その弓で弾けない”
”また来ないといけない”
どこも同じ答えでした。

職人さんがそこにおられない楽器店の場合、毛替えは預りです。
預かるときに、代わりの弓を貸してくれたりもします。
貸してくれるのは、小さなお店、チェーン店でないところが多いようです。

預けるしか選択肢のないお店へは、あまり毛替えに出さない方が良いで
しょう。
”私が修繕した方がマシちゃうか?” と思うような楽器が売られているの
に出会ったこともあります。
預けるしか選択肢のないお店へ出すときは、どこで誰が毛替えをするの
か、質問しましょう。
質問されることで、お店側にも緊張感がでます。

預かるvs預からないと大きく関係する、乾し方という問題があります。
湿らせた毛に、ドライヤーなどの温風は当てない方がいいのです。
もちろん職人さんたちは、熱風が弓&毛を直撃しないように温度や風の
当て方を工夫されています。
乾かさないまま返してもらうと、乾燥後の状態確認をしてもらえない
だけでなく、ケース内が湿気たり、毛に雑菌が繁殖しやすくなります。

預けて買い物などに行き、数時間後に戻ってくるのも、いいかもしれません。
でも私だったら、工房なんてたまにしか行かないので、職人さんの作業
のやりかたを見て質問したり、工房の中のものを眺めたりして、そこで
時間をつぶします。
練習させてもらえることもあります。
あんまり話しかけると手元に集中できないので、気をつけましょう。

④工房による違い

楽器店は、売っているものや提供サービスが、どこへ行ってもだいたい
同じです。
しかし工房では、それぞれの職人さんの得意なことに重点がおかれて
いたりします。
新作楽器を作るのが得意な工房もあれば、調整が得意、修繕が得意、
毛替えが得意な工房もあるでしょう。
楽器店とちがい、どこの工房へ行ってもだいたい同じ、ということは
ありません。

京都市内には、楽器の製作だけを請け負っている工房があります。
大阪市内には、楽器の調整に特化している工房もあります。
バロック弓の製作を得意としている工房もあります。
新作楽器を作る工房はたくさんありますが、弓はあまりなく、さらに
バロック弓となると更にないのでしょう。
お客さんの要望・ご縁を大切にしているうちに、その分野が深堀りされ
たのだと思います。
弓の材料フェルナンブーコの削りくずは、染め物に使えるので、そこへ
行くといつももらってきます。

たくさんの種類の毛から選べるお店もあります。
馬毛はひと束うん十万円するので、あるていどの経営規模がないとそれ
だけの種類は用意できません。
また置いておきすぎると古くなるので、職人さんの人数や回転率も気に
しましょう。
弦も同じことが言えます。

毛替えしてもらうとき、楽器の手入れをしてもらうとき、いちばん大事
なのは品質です。
しかし素人目には、判断がむずかしいですね。
誠意をもってやってくれるかも大切です。
人柄が良ければ、品質を信じる、それもありかと。

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