中川恵バイオリン・ビオラ教室

バイオリン・ビオラの調弦方法

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バイオリン・ビオラの調弦方法

バイオリン・ビオラの調弦方法

2020/04/30

家で練習するときの調弦が適当でも、週に1度レッスンに行けば先生がピシッと調弦してくれる。それでずっと習い続けてきた方はおられないでしょうか。

アマオケで、コンマスのA音に一斉に合わせる調弦ができない方も、この機会に学びなおしてみましょう。

 

電子チューナーを使うときは442Hz になっているか確認しましょう。うっかり↑↓のボタンを押してしまって、変わっていることがあります。調子笛や音叉も442Hzではないものを買ってしまっていないか、確認しましょう。

[1]アジャスターでの調弦

アジャスターが付いていると子供っぽい? へたくそだと思われる?
一流の演奏家で4弦アジャスターを付けている人も、さがせばいます。

うちの教室で一番調弦の上手な生徒は、アジャスターで調弦します。彼女はペグの利点、アジャスターの利点、両方を知った上でアジャスターにしています。それぞれの特性を知って、自分にとってベストな方法を選びましょう。

ペグの利点、アジャスターの利点について知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。

2020.04.09 ペグで調弦するか、アジャスターで調弦するか

(1)ペグで大まかな音程をとる

まずペグの位置を決めます。音程が大きく狂っていない場合は、この過程は飛ばしてください。

アジャスターのネジを最後までゆるめます。
その状態でペグで調弦をします。音程はやや低め、ピッタリよりちょっと下の位置で止めます。
KORG や YAMAHA の電子チューナーであれば、大きな●メモリの2~4つ低いくらい。

(2)アジャスターの動かし方

次に、アジャスターのネジを巻いていきます。バイオリンはADGE、ビオラはADGCの順番で行います。

左手を、右腕と自分の間に入れて、弾きながらネジを回します。体幹や楽器の位置・弓の軌道が変わらないように、左手を入れましょう。この姿勢を取るときの身体の使い方も、バイオリン・ビオラを弾く練習になります。

この姿勢が難しい場合は、
①楽器は机の上などに置いて(タオル等を敷いて固定しましょう)弓を弾きながらネジを回す
②弾いて音を出すのではなく、弦をはじいて音を出す
などの方法があります。

②の場合、バイオリンを肩に乗せて構えた姿勢でもいいですし、肩から降ろしてギターのように抱えたり、机上やケース内に置いてもいいです。
はじく音は、すぐ減衰するため聴きとりにくく、音程も弾いた場合とすこし違ってきます。できれば弾いてください。

[2]ペグでの調弦

ペグ調弦が上手か否かは、楽器の上手さと必ずしも相関関係にありません。身体が小柄なほど難しいですし、大きなビオラほど難しいです。

ペグでの調弦、アジャスターでの調弦、自分にはどちらが適しているのか迷う方、考えたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

2020.04.09 ペグで調弦するか、アジャスターで調弦するか

(1)ペグを回しやすい向きにする

この過程はとばしてもいいのですが、力がかけやすいペグの傾きになっているほうが、楽に調弦ができます。

ペグで調弦をするときは、楽器側へ押し込みながらペグを回します。ペグの芯は先端ほど細くなっているので、押し込まないで回しているとだんだん浮いてきて、ちょっとした衝撃で弦がゆるんでしまいます。ペグの向きが悪いと、押し込みながら回すことができません。

ペグの傾きを直すには、弦を巻きなおす必要があります。弦を交換するときペグの傾きに気を配ると、あとあと楽です。ペグソープも必ず塗りましょう。

2020.09.08  バイオリン・ビオラ 弦の交換方法

(2)ペグの動かし方

ペグ手前へ回して、音程を少し下げます。電子チューナーを見ながら、弾きながら、ペグを向こう側へ回して音程を上げていきます。合ったと思ったところでペグを止めます。弾いたときの音程をチューナーで確認してみましょう。

低い位置で止まってしまった場合は、チューナーを見ながら左手を止めるタイミングを 少し後ずらしにする必要があります。高い位置の場合は、止めるタイミングを 少し前にする必要があります。
バイオリンはADGE、ビオラはADGCの順番で行います。

大きく狂っている弦があった場合、ほかの弦も再確認しましょう。例えば、D線を合わせたあと取りかかったG線が、調弦前かなり低かった場合。G線を合わせたあとのD線は音程が下がっています。

合わせたい音程より高い方向へは、基本行かないようにしましょう。弦にストレスがかかると切れやすくなります。

[3]電子チューナーについて

電子チューナーは大きくわけて、置き型とクリップ型があります。

バイオリンを始めたての方は、まず置き型を買うとよいでしょう。一番ポピュラーで信頼性が高いのが、メトロノーム機能もついた KORG や YAMAHA のものです。SEIKOからも出ています。
メトロノーム機能もついた電子チューナは大きい(写真右 W11cm H7cm D15mm)ので、シェル型(三角形)の楽器ケースには入らないことが多いです。シェル型でも Super Light は入るでしょう。
置き型には、メトロノーム機能のないやや小型のタイプ(写真左)もあります。

クリップ型(写真中央)はケースの空スペースに入りやすく、空気伝搬ではなく個体伝搬(物体が振動する)音を拾うので、オケをしている方に向いています。置き型より、ハードもソフトもやや壊れやすい印象です。私が持っているKORGのクリップ型は、首がパキッと折れて液晶画面がまっすぐ立たず、E音は反応しません。

置き型のチューナーは周囲の音も拾ってしまいますが、コード&クリップの別売り品を使えば、自分のバイオリンの音だけを拾います。クリップを駒のE線側の横にはさみ、反対側の端子をチューナーに挿します。純製品でない安いものでも使えるようです。

バイオリンを始めとするオーケストラの楽器は、現在442Hzが標準ですが、電子チューナーには442Hzに設定できないものもあります。バイオリン・ビオラ・チェロの専門店で売っていたり、箱にバイオリンに対応していると書いてあるものは、大丈夫でしょう。店頭にバイオリンが並んでいても多様な楽器を扱っているお店では、442Hzにできないチューナーもあるかも知れませんので、注意してください。

より気をつけたいのは、クリップ型チューナーのクリップの形状です。楽器によりクリップを付けたい箇所はさまざまです。取りつけ後に液晶画面を向けたい方向もさまざまです。元々それぞれの楽器に合わせて、クリップ幅・クリップ形状・液晶画面のむく方向がことなる商品が売られていたのですが、最近兼用できると宣伝されている品が増えてきました。
専門の楽器店の店頭で見ればわかるのですが、バイオリン用の電子チューナーとチェロ用の電子チューナーは、本体部分が同じで、クリップ部分が違います。
2021.12.20  クリップ型チューナーの選び方・使い方

バイオリンとビオラは兼用できるとされていますが、「バイオリン用だけどビオラも使えるでしょ」と思われている可能性があります。ビオリスト、とくに大きなサイズのビオラを使っている人は、実物を試してから買うほうがいいと思います。
ちなみに、ミュートでバイオリン・ビオラ兼用のものは、まずビオラには合いません。肩当てもバイオリン・ビオラ兼用のものは存在していません。

私はあまりお勧めしないのですが、スマホに電子チューナーのアプリをダウンロードしている生徒さんもおられます。チューナーは小型のもの、メトロノームはスマホ、という方もおられます。

[4]耳を使った調弦

電子チューナーは簡単で正確で便利なのですが、目で合わせるので「音程」「音感」力は鍛えられません。

アマオケでは、コンマスのA音に合わせて調弦します。これは実際にバイオリンのA音に合わせる練習をしなければ、鍛えられません。
発表会やコンクールでは、ピアノのA音に合わせなければなりません。これも実際にピアノと練習しなければ、できるようになりません。

実際にバイオリンやピアノの音を相手に調弦の練習をする機会は得られにくいと思いますが、耳を使った調弦の練習が日頃からできないか考えてみましょう。

(1)チューナーの電子音

これはお勧めしません。合わせにくい上に、合わせるコツを習得しても生かせる機会がありません。

(2)ピアノ

身近にピアノがあるなら、ピアノと合わせる調弦の練習をしてみましょう。発表会や友達との遊びなど、ピアノと弾く機会は誰にでもありますから、実際に役立ちます。保護者さんがピアノを叩いてあげると子供のやる気もアップします。

一番右のダンパーペダルを足で踏んだまま鍵盤をたたくと、音が持続しますので、その間にバイオリンの調弦をします。合ったと思ったらペグ/アジャスターを回す手をとめて、バイオリンとピアノを同時に鳴らしてみます。微妙に合っていない場合、バイオリンの音程が上がりきっていないことが多いです。

耳元で聴こえる音は、実際より高めに聴こえる傾向があります。ピアノの響きの幅の、上の方に合わせるつもりで、アジャスター/ペグを止めるタイミングを後ずらしにしましょう。

(3)調子笛=ピッチパイプ

ADGEの音が出る簡易なハーモニカのような器具です。(写真下) ビオラ用はないようです。

私が幼かったころ、子供たちは皆これで調弦していました。当時はステンレスの重たいものしかなく、口にくわえ唇で挟んで良い音を出すのもバイオリンを修得する過程のひとつでした。現在の材質はプラスチックやアルミなど軽くなっていて、くわえやすくなっています。

昔のステンレス製は調弦に使えるくらいの正確さがありましたが、現在のプラスチック製の音程はかなりいい加減です。それでもバイオリンの習いだし初期に、4弦の音程を脳裏に刻むのには役立ちます。

(4)音叉

二股になっている方で、その辺の硬いもの、机の角などをコンッ!と叩き、そのあとすぐ反対側の丸い数珠のようなところをバイオリンの表板に当てます。A音が響きますので、それを記憶して調弦します。合うまで繰り返します。
バイオリンではなく、響くところならどこに当ててもいいです。頭に当てると頭蓋骨に響きます。

置き型の、小さなマレットで叩く音叉もあります。持つ音叉は、バイオリンから離すと音が消えてしまいますが、置き型はしばらく鳴っていますので合わせやすいです。音が美しくて心地よく、高級なおもちゃのようです。値段は高いですがインテリアにもなり、やる気が増します。

私は小学校低学年くらいまで調子笛、中学年くらいから音叉を使っていたように記憶しています。電子チューナーはありませんでした。

(5)Aから、DGEを取る

家でひとりで練習するときの、耳を鍛えることができる最も現実的な方法です。A線は電子チューナーで取り、他の3弦を耳で合わせます。

まずA線からD線を取ります。
①A線とD線を同時に弾きながら、D線のペグ/アジャスターを回す
②音程を少し下げた状態からスタートし、だんだん上げていく
③耳で聴いてぴったりの位置より、わずかに高くする
④D線をチューナーで確認する

このとき③でぴったりと思う位置で止めると、④の針は少し低く表示されます。それは純正律だからです。

D線が合ったら、次にD線とG線を同時に弾いてG線を合わせます。合わせ方はD線と同じです。

最後にA線とE線を同時に弾きながら、E線を合わせます。このときはぴったりと感じる位置にします。チューナーで、小さな●ひとメモリ分 高いくらいがOKです。

そんな微妙な音程わかるわけない、と思われるかも知れませんが、初心者でも感じとる生徒さんはおられます。
曲の音程も教本をこなしていけば良くなっていくように、調弦の音感も練習すれば良くなっていきます。

(6)AからAを取る

ひとりでは出来ませんから、友達どうしでやる、レッスンで先生にお願いする、などの方法を考える必要があります。
隣の弦からチューニングするときとは違う、別のコツがいります。ピアノのAと合わせるのとも違います。

①442Hzで誰かにAを出してもらう
②音程を少し下げた状態からスタートし、だんだん上げていく
③耳で聴いてぴったりの位置より、わずかに高くする
④1人づつA線を弾いてみる
 チューナーで確認してみる

耳で聴いてぴったりのところで止めると、音が上がりきっていないことがあります。

④で、相手のAと自分のAが合っているように聴こえるのにチューナーで測ると違っているばあいは、自分のバイオリンを相手に渡して、2つのバイオリンを代わる代わる弾いてもらいましょう。
2人同時にAを弾くと、にごった響きになって微妙にズレていることがわかります。2台のバイオリンのAが合ったときは、自分の出している音が消えてしまったような、相手の音に吸い込まれてしまったような感じがします。

アマオケは、ペグ調弦の格好の練習場です。

①コンマスがAを出したら、皆がAを弾きだす前にその音程をとらえてチューニングを開始
②全体の音が鳴り止んできたら、自分にだけ聴こえるくらいの小ささでAを弾いてみる
③まずい!と思ったらアジャスターを回して合わせる

アジャスターは、オケの弦楽器全員がAを弾いている最中に上げ下げしても、音程の変化を聴き取ることができません。アマオケの一斉チューニングは、ペグ調弦が向いているのです。

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