中川恵バイオリン・ビオラ教室

バイオリン・ビオラはどこで買ったらいいか

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バイオリン・ビオラはどこで買ったらいいか

バイオリン・ビオラはどこで買ったらいいか

2019/12/02

バイオリン・ビオラをどこで買ったら良いか、初めてのときは分からないものです。
もっと良いもの・高価なものを手に入れたい場合も、どこで買ったらいいかは悩ましい問題です。

バイオリンやビオラは手工芸品です。分数バイオリンや初心者セットは工場で作られてはいますが、材料が木であるため家電製品のように質が一定ではありません。
メーカー・ブランドは何十とあります。よく聞く老舗メーカーでも、製作年が違えば製造国が違うし、工程も変わります。どんなバイオリンと出会えるかは、運命にお任せするしかありません。

自分の意思で選択でき、はっきり違いが出るのは、「どのお店で買うか」です。目利きの人が見ておかしな楽器は、仕入れではじかれます。また調整により、音色や弾きやすさが大きく変わります。
その後のメンテナンスにかかる費用も変わってきます。自分のお店で販売したバイオリンは、安くしてあげる(時と場合によるけれど)のが業界の慣例だからです。なにを買うかではなく、どこで買うかが大事なのです。

どこだと安心して買えるのでしょうか? 何に気を付ければいいのでしょうか?
「バイオリン どこで買う」タグの記事も参考にしてください。

(1) お店選びの前に知ってほしいこと

①どんな困ったことが起きるのか

安いバイオリン、または調整不足のバイオリンを買ったばあい、こんな困ったことが起きます。

①音が出にくい→やる気が出ない→練習しなくなる
②調弦しにくい→調弦に時間がかかる→弾く時間が減る
③先生もやる気が出ない
④トラブルや故障が起きやすい


③状態の良くないバイオリン、調弦がしにくいバイオリンは、すんなりレッスンに入れないので、先生としては非常にあせります。レッスンにやる気が起きない自分を見過ごすわけにはいかないので、自分を励ましながら生徒さんと対話の糸口をさがします。なぜこれを買ってきたのか、理由がわかれば、その後レッスンを続けるなかで、双方の着地点を見出すことができます。

④いままで以下のようなトラブルや故障がありました。

●指板やネックがはずれる
●調弦できない
●異音がする
●弓が使えない


調整が必要でも、買ってすぐ調整しなければならないバイオリンを売った楽器店へはあまり行きたくありません。しかし基本的に、販売直後の調整は無料、もしくは安価でしてもらえますが、別の楽器店へ持っていけば正価の代金がかかります。

ある楽器店で買ったバイオリンの指板がはがれてしまった生徒さんがおられました。その楽器店は怪しい修繕をしていると知っていたので、京都の工房へ持っていってもらいました。もちろん正規の修理代を払うつもりでした。ところが昔気質の職人さんは、販売店が責任を全うしていないことに怒り、販売店で無料で直してもらうべきだと言い、直してくれませんでした。

初心者向けバイオリンや分数バイオリンに多いのが、アジャスターが付いていないことです。バイオリンを始めたての方が、ペグで調弦することはできません。ペグ調弦できないお客様に、アジャスターが付いてない楽器を売るのは、おかしいと思います。

弓のスティックが割れた。アジャスターを巻いても毛が張れない。毛がぷちぷち切れる。ビオラ弓がついていた、チェロ弓がついていた、なんてこともありました。

②価格帯について

分数バイオリンや大人の初心者さんには、税込7~9万円のセットバイオリンをお勧めします。楽器と弓とケースがセットになっています。肩当てや松脂がついていることもあります。

このクラスのバイオリンは、楽器と呼べる、最も安い製品です。各メーカーがしのぎを削る、コストパフォーマンスの良い価格帯です。ビオラは、バイオリンより少し高くなります。

小さな子供さんは、これから何回かサイズアップしなければならないのに、8万円は高いと感じられるかも知れません。しかし分数バイオリン数台の値段は、アップライトピアノ1台(または優れた電子ピアノ1台)の値段です。
サイズアップするとき買ったお店に持っていけば下取りしてくれますし、購入したお店でなくても値が付くことがあります。手入れをすれば、子供や孫も使えます。


8万円出すのはちょっと厳しい・・と思われる方は、中古バイオリンか、下位グレードのセットバイオリンを探してみてください。お勧めは中古バイオリンです。

あまりお勧めしませんが、下位グレードのセットバイオリンを検討する場合は、上位のラインナップが在るメーカーか確認してください。例えば5万円のセットバイオリンを検討する場合は、そのメーカーが8万、12万、20万というように上位のラインナップも出しているかを確認してください。上位ラインナップのないメーカー・ブランドのものを買ってはいけません。
7~9万円グレードより安いバイオリンは、下取りの対象になりません。また弓に価格のしわ寄せが行っているので、毛替えより買い替えがいいと思います。


初心者さんや分数バイオリンで、もう少し高い予算を組まれる方もおられます。数十万円の予算なら、セットではなく、バイオリン本体と弓を別々に選ばれるといいでしょう。
またバイオリン本体に60万円(以上)かけられるなら、新作ではなく、モダン・オールドをお勧めします。エイジングにまさる品質はありません。モダン・オールドをさがすとき一番お勧めしないのがイタリア製です。割高なのです。

③メーカー・ブランドについて

安いものは工場で作られています。経営している人と、作っている人は別。作っている人も作業工程ごとに変わります。機械で可能な工程は機械で行い、機械でできない作業や最後の仕上げを人がします。

数十年前まで安いバイオリンは、表板・裏板のカーブをプレスで出していました。機械ではできないし、人が削ると人件費が高くつくからです。 
しかし今はカーブを出して削れる工作機械があります。資本があればバイオリンが量産できる時代が幕を開け、低価格帯のバイオリンの質は飛躍的に上がりました。

工場製のバイオリンメーカーは、世界に何十社とあります。私が子供のころ入手しやすいものはスズキくらいしかありませんでした。
一般的に信頼を得ているメーカー名を書きたいのですが、グローバル競争社会は動きが早く、メーカー名ブランド名もがんがん変わってゆきます。

もし気に入ったバイオリンが、評判のわからないメーカーの場合は、
●何年続いているメーカーか
●大手の楽器店で取り扱っているか
●7~9万円セットより上のグレードがあるか

などを目安にするといいと思います。

セットバイオリンは弓がいまいちなことが多いです。買う人は楽器(とケース)に気をとられて、弓はあんまり見ないからです。7~9万円の売価で楽器本体をできるだけ良くしようとすると、どうしても弓にシワ寄せが行きます。

 

高い楽器は工房で作られています。 欧州では、親方1人に修行中の職人さんが何人かいたり、家族・親戚が加わったりなど、数人~十数人の工房が多いです。親方クラスの職人さんが自分の名前を冠して仕上げるバイオリンもあれば、弟子たちが分業制で作る割安な工房製バイオリンもあります。
日本は、職人さんが1人でやっている工房が多いです。

工房製の新作バイオリンは、日本・東欧のものがお勧めです。イタリア製は割高です。人件費の安い国製だと、よいものが手ごろな値段で売っています。中国の工房製(工場製ではなく)の良いものも幾度か見ました。

新作バイオリンのイチオシは日本の職人さんが作ったもの。とにかく品質が高い。楽器製作の国際コンクールで入賞する職人さんも多くおられます。作者と奏者の距離が近ければ近いほど、作者は良いものを提供しようとの熱が上がります。フルオーダーではなく、出来上がったバイオリンのなかから気に入ったものを選び、少しカスタマイズ(ネックを細くする等)してもらうのがベストです。

(2) バイオリンが買えるお店

バイオリンの製作・修繕の現場に近いところから、順に説明していきます。

①職人さんの工房

バイオリン・ビオラ・チェロの製造・修繕に一番近い販売店が、工房です。オーナーは職人さんです。

工房は、弓の毛替えをしたり、楽器の調整をしたり、また修理をするのが主な業務内容です。バイオリン・ビオラ・チェロを作って販売していることもあります。

そのためバイオリンを買いたいとき、高いバイオリンは何点か見せてもらって比較して選ぶことができますが、安いバイオリンは 注文してから 取り寄せてもらうことになります。 

メーカーやブランドの選定は、希望があればそれを取り寄せてくれることもあります。しかし特段の事情がなければ、お任せするのが良いと思います。職人さんなりの見解や、取引の事情があるからです。

色んな楽器を扱っている楽器店では、メーカーから送られてきたバイオリンセットがそのままお客様に渡されるのが一般的ですが、職人さんであれば自分の目と耳で点検し、必要であれば調整もします。


いわゆる楽器店はどこも事業内容がだいたい同じですが、工房は店主によりそれぞれ特徴があります。工房により対応が分かれるのが、 

●肩当てやチューナーなど関連商品の販売をしてくれるか
●顎当てやネックを削ってくれるか
●8万円セットより安価なグレードを取り扱ってくれるか

といった点です。


私がお付き合いしている工房は、技術力は高いのに謙虚で、お客様に安価になるよう考えてくれるところばかりです。実際のところ世の中には、安価になるよう考えてくれないバイオリン工房もあります。

売り手と買い手の距離がさらに離れる楽器店では、できるだけ高いものを・沢山のものを売りつける、という経営方針のお店もありました。バイオリンによらず、方針を決める人と現場の距離が離れると、こういったことが起きやすいのでしょう。

ふらっと立ち寄って応対してくれるケースもありますが、基本は来訪を予約してください。まずは電話して、色々質問してみるといいでしょう。

工房の職人さんは、弦楽器製作者協会に属している方も多いです。下記のリンク先でご覧になってみてください。属していない方もおられますが、属していないから信頼できない、ということではありません。職人さんは1人で自立して商売をされているので、考え方が多様なのです。

関西弦楽器製作者協会

②バイオリン・ビオラ・チェロ専門の楽器店

初めてバイオリン・ビオラを買うとき、また分数バイオリンを買うとき、一番お勧めなのは バイオリン・ビオラ・チェロ専門の楽器店 です。

「弦楽器」と呼ぶとギターやマンドリンも含まれてしまうので、ちょっと長ったらしいですが正確を期すために、「バイオリン・ビオラ・チェロ専門の」という言葉遣いにしました。
コントラバスは属が違うので、小規模ですと扱っていなかったり取り寄せのこともあります。反対にコントラバスonlyの専門店もあります。

バイオリン・ビオラ・チェロ専門の楽器店では、そこに並んでいるものの中から楽器を選ぶことができます。希望の価格帯のものがなければ、頼んで取り寄せてもらうこともできますが、買うかどうかは現物を触ってから決めることができます。予約なしで立ち寄れる点もありがたいです。

お客様の応対をしてくれるのは、バイオリン・ビオラ・チェロの専門知識を持った販売スタッフです。中には音大でバイオリンを専攻してきた方もおられ、道具目線の工房の職人さんより、「弾き手」の気持ちを分かってもらえることがあります。

関連商品の販売やサービス内容も充実していて、日曜祝日もやっています。これから始められる方には関連商品と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、バイオリン・ビオラには、必須 且つ 選ぶのが難しい付属品が色々とあります。そういう細々とした商品は、お店側にとっては労多くして益少なしなので、規模が小さい販売店では品ぞろえが少なくなります。

予約なしでも立ち寄れると書きましたが、予約してから行った方が良いことがあります。予算に合う楽器が複数台あるかどうか、事前にわかります。また希望に近い楽器は、その場で引き渡せるよう点検・調整をすませておいてくれたりします。フラッと立ち寄って買うと、再度足を運ぶハメになることもあります。

また、職人さんが常駐している楽器店と、外注の楽器店があります。どちらか選べるなら常駐がいいです。楽器や弓を預けなくてすみ、職人さんと直接会話ができます。変な音がする、なんだか弾きにくい、といった困りごとの場合、職人さんと直にやりとりできるメリットは大きいです。

毛替えや調整を頼むときは、工房と同様 予約をしてください。職人さんは1人体制のことが多く、お休みの日もあります。
ちなみに外注の楽器店の場合、実作業を請け負っているのはたいてい①の職人さんです。

③いろんな楽器を扱っている楽器店

店舗数が一番多いのは、このタイプの楽器店ではないでしょうか。いろんな楽器を扱っていても、専門知識のあるスタッフさんがいる②に近い楽器店もあります。

①工房 や ②専門の楽器店 へ行きたくても、遠方にしかない場合もあります。遠方まで行く価値はあるのですが、それくらい「いろんな楽器を扱っている楽器店」とは違うのですが、小さなお子さんがいたりすると現実的に無理だったりします。そう考えると こういったお店の存在もありがたいものです。

沢山ある楽器のひとつとしてバイオリンを扱っているので、専門性を求めることはできません。弓の毛を張ることや、肩当てが必要なことを知らない店員さんもいます。バイオリン弦が30本ほどありながら、A線が1本も無かった楽器店にも出会いました。

新作のセットバイオリンは、販売店での点検・調整なしにお客様へお渡しできるよう、メーカー側がペグの調整やアジャスターの取付をするようになってきました。1年保証も付いていたりします。③④経由で購入しても、比較的安全です。

毛替えや調整は、職人さんが常駐していない「専門の楽器店」と同格のところもあれば、素人同然の店員さんがみようみまねで行っているところもあります。

関連商品の販売は、「工房」と「専門の楽器店」の間くらいと思います。教本を取り寄せ注文するのにとても助かります。付属品の取り寄せは、店員さんの理解が浅いと、違う物が届くこともあるので、気をつけましょう。

④ネットショップ

楽器店同様、ネットショップにも様々な形態があります。

②バイオリン・ビオラ・チェロ専門の楽器店 や ③いろんな楽器を扱っている楽器店 がネットショップを持っていることもあります。その場合は、実店舗と同じと考えて差しつかえないでしょう。

また ①職人さんの工房 が、工房へ足を運んでくれたことのあるお客さんに、遠距離対応してくれることもあります。大阪のある職人さんは、分数バイオリンのサイズアップを電話注文で受けて、仕入れて点検・調整したものを宅急便で送ってくれます。

実店舗のないネットショップの楽器屋さんも、良心的なところはあります。実際にいくつか知っています。ただ怪しい(一定の技術レベル・サービスレベルに達していないと思う)ところが多いことも事実です。

見分ける方法としては、
●何年前から事業をしているか
●お店の方針や商品説明などの書き込み(長年お客さんの信頼を得ているなら、相当の書き込みがあるはず)
●電話で問合せを受けているか(実際に電話してみましょう)
などを確認しましょう。

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