アタリもあればハズレもある ネットの中古バイオリン
2021/11/21
ネットでのバイオリン購入はあまりお勧めしません。
一番の理由は、アフターサービスが違ってくるからです。実店舗で正価で買ったばあい、購入後トラブルや使いづらい箇所があれば、無償で対応してくれます。割引率の高いネットショップで買った場合、修理代も送料も無償であることはありえないと考えましょう。
バイオリンやビオラは木製で、一種の工芸品です。大量生産の工業製品のように「基本的に問題は起きない」とは考えない方がよいと思います。
中古バイオリンの場合、瑕疵のある可能性は、新作に比べて格段に跳ねあがります。新作であればトラブルがあった場合それは出荷時からのものとみなしてもらえますが、中古の場合は瑕疵が隠れていることも前提のうえでの購入になるので、購入後の修理・調整は原則買い手負担になります。
ネットで買ったバイオリンに、ビオラの弓・チェロの弓が付いていたこともあります。
まさかビオラ弓が付いてくるとは思わないので、ごつめの弓だなあと思いながら、調整のため枚方の工房へ持っていってもらい、ビオラ弓と発覚しました。
二つ目の理由は、勉強にならないからです。店舗へ足を運べば、直に見て、話しを聞いて、選ぶことになります。
バイオリン・ビオラ関係の付属品にはどんなものがあるのか確認できます。付属品を選びたいばあい、ネットでいくら情報を集めても「百聞は一見に如かず」です。肩当てが合うか合わないかは、自分のバイオリンに付けて弾いてみなければわかりません。
ネットでの中古バイオリン購入は、出費に見合わないバイオリンを買ってしまうケースもあれば、安価に良いバイオリンが手に入るケースもあります。ブレ幅が大きいという意味で、「リスクが高い」という表現がぴったりです。
アタリハズレの確率はどれくらいなのでしょう?
過去5年ほど遡って、生徒さんが買ったバイオリンのアタリハズレ度を、購入ルート別に集計してみました。
様々な楽器を扱う楽器店でも、バイオリン専門のスタッフさんがおられる店舗は、バイオリン専門店に含めました。
購入された額を毎回うかがってはいませんが、ほとんどがセットバイオリンなため、値段に見合っていたかどうかは、ラベルや品番、外観や生徒さんの話などから判断しました。私が立ち会っていない高価な楽器は、集計対象から外しました。
◎アタリ
〇値段相応
△ややハズレ
✕ハズレ
バイオリン専門店・バイオリン工房 で購入
◎4/4新作
◎4/4Va ネットでハズレVnを買った反省を踏まえ、工房で買った
◎60万オールド 先生が付き添って、自分で選んだ
◎1/2新作 選定と調整は職人さんにお任せ
〇4/4新作
〇4/4新作
〇1/4新作
△4/4新作 弓のネジが回らない 販売店からメーカーへ送り返して無償交換
様々な楽器をあつかう楽器店 で購入
◎4/4中古 アタリハズレの激しい店舗だったが、珍しくアタリがあった 先生立ち合い
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇4/4新作
〇1/4中古
〇1/10新作
△4/4新作 買って数週間後、指板がはがれる。販売店にて無償修理
△3/4新作 買って1年過ぎてから、指板がはがれる。販売店にて無償修理
△1/2中古
△1/2中古 音質が悪く、後日工房で調整(有償)
△1/4中古 実店舗で何点か見比べて買ったが、音質が悪く演奏にも支障が出てきたので、後日工房で調整(有償)
△1/8新作 ペグが止まらず実用に即さない 音質が悪い 工房で調整(有償)
ネットの楽器店 で購入
△4/4新作 HPには「職人が駒を調整」との記述があったが、子供の工作のような造作だった。
△1/4新作 4万で購入したそうだが、音質が悪く、発音しにくい。
メルカリやネットオークション で購入
◎4/4中古 経験者の生徒さんが、予備の楽器として購入
◎1/4中古 どれくらい続くか分からない1台目であったため、投資できないとの理由にて
○1/4中古
○4/4中古 3万円かけて修理
△4/4中古 弓はビオラのものが付いていたため買い直し
✕4/4中古 3万円かけて修理
✕4/4中古 4万円かけて修理 弓はチェロのものが付いていたため買い直し
✕4/4中古 指板の反りが激しく修理代がかかると言われ、新作を買い直し
サンプル数が少ないのですが、実店舗で買ったバイオリンは品質が安定していて、メルカリ等で買ったものはバラツキが大きいことがお分かりになりますでしょうか。
明らかに「ハズレ」と言えるケースは、メルカリ等しかありません。
ただメルカリ等で生徒さんが買った楽器は、ほとんど値段を尋ねていません。数千円で買っていたとしたら、数万円の修理代で手に入ったお買い得品、とも言えます。
良い実店舗の難点は、その所在が都会に集中していることです。
また7万円より下のグレードのバイオリンを取り扱っていないことがあります。
これは、7万円より安い価格帯は「楽器といえる品質ではない」ためなのですが、何か月続くか分からない習い事の初期投資に7万円の負担は重すぎる、と感じられるご家庭も少なくないでしょう。
大阪茨木市の楽器店アマービレは、中古バイオリン・ビオラに力を入れており、4~5万円の楽器のなかから比較して選ぶことができます。大阪梅田のクロサワバイオリンも、タイミングによっては中古バイオリンがあります。島村モデルのイーストマンを使っている生徒もいます。
ネットの楽器店で買う場合、私がお伝えしている留意点は2つあります。
①実店舗もあるネットショップにする
②長年続いている店舗にする
いつから楽器販売業をしているかは、偽ることもできます。
掲載情報の丁寧さや、過去から積み重ねられた情報量などを見て、判断しましょう。
ご武運を祈ります。