中川恵バイオリン・ビオラ教室

バイオリンの身体の使い方を勉強するために 習った古武術の話

お問い合わせはこちら

古武術と挨拶

古武術と挨拶

2022/01/19

身体の使い方を勉強するために「大東流合氣柔術」という古武術を習ったことがあります。
会津藩の殿中の奥儀だったものを、編纂した技とされています。

 

なんと京田辺市に先生がおり、古武術 習いたいな~と思っていた時にチラシがポスティングされたのでした。
文言を読み、これはまるで私が追求しているものと一緒じゃないか!と思い習いにいったのです。
系譜が定かではなく流派も多い武術ですが、このサイトが分かりやすい  と思ったのでリンクしておきます。

 

腕力で打ち込まれたものを、徒手で受けて攻撃のエネルギーを「無力化」し、相手を投げたり押さえたりする。
攻めるためではなく、護身のための術です。
殿中で使われた技だったからか座位の型が多く、先生と1対1で向かいあい、様々な腕の掴みあい方で練習をしました。

 

私が攻撃役で先生の腕をグイ!とおしても、先生がそれを受けるとまるで、暖簾か糠みそのなかに腕をつっこんだごとくヘニャッと体中の力がぬけて、こてんと転がされてしまいます。この「無力化」される感覚は、通常の力学の法則では説明ができません。
力で返されると ”なにおっ!” と反発したくなるところが、「無力化」されると戦意を失い、思わず笑ってしまいたくなります。

 

攻めを受ける練習は、一度 ”今の出来た!” と思っても、もう一度やろうとすると出来ない。
その繰り返しで、出来るようになるためには、 ”今の出来た!” という経験を重ねるしかありません。
そんなところもバイオリンにそっくりです。

 

先生からは「相手(の中)を見る」「眼で見ない」と繰りかえし言われました。私はこれが苦手で、「相手の中を見る」のは失礼なことに思えてしまうのです。でも先生にワザをかけられた時、失礼とは感じません。

 


大東流から足が遠のいて、のちに出会った「愛魂(あいき)」も、戦意を失い、思わず笑ってしまいたくなる護身の柔術です。愛魂は正式名を「冠光寺流柔術」と言い、物理学者の保江邦夫さんが日本各地で広めてきました。
カトリック教の修行に由来したもので、”汝の敵を 愛せよ” というキリストの教えを柔術技法に活かして合気に似た効果を生みだし、筋力や身体能力に劣る者が優る者を制することができるのが特徴です。
氣を使い、攻撃を無力化する。戦意が失われ、思わず笑ってしまう。大東流合気柔術と同じでした。

 


大阪は江坂の「視覚情報センター」田村知則先生から教えていただいたU先生の講習会のシリーズを、受講したこともありました。その武道の先生は、相手の身体に触れずに押したり引いたりできるのです。

 

何十年も前、気功を習っていた友人から、”背後から先生が(体に触れず)引っ張ると倒れてしまう” と聞いたことがあったのですが、”まさかそんな” とずっと思っていました。その時お昼ごはんのテーブルを囲んでいた同僚の誰もが、信じていなかったと思います。

 


フィギュアスケートの羽生結弦選手は、仙台を拠点として試合に出ていたころ、当時4分30秒だったフリープログラムの終盤で、息が続かなくてバテていました。当時の彼のコーチは、体力を強化すべく、スケートリンクをぐるぐると全力で滑る練習をさせていました。

2012年 東日本大震災の翌年、2010年バンクーバーオリンピックで金メダルを取ったキム・ヨナのコーチ、ブライアン・オーサーに師事するため、カナダへ渡ります。そして体力そのものを強化したわけではないのに、4分30秒を滑り切れるようになりました。

 

ブライアン・オーサーは、羽生選手の指導を始めることが決まった時点のインタビューで、「エネルギーの使い方の問題だ」と答えています。体力や筋力ではない、と言うのです。

 

バイオリンを弾くエネルギーも、筋力的なものではありません。氣が関係していると思います。

氣というと、特殊能力というイメージがありますが、武術にもバイオリンにも「型」というものがあって、それに添って反復練習をすれば、誰でも出来るようになるのです。

前述のU先生も(氣の使い方を身につけるために)「型」から入った、といった意味のことを語っていました。

 

 

U先生の講習会では、取り組み前に「礼をしたとき」と「礼をしないとき」の違いを、何度も検証させられました。
礼をしてからワザをかけると、かかり易くなるのです。
相手からワザをかけられても、倒されにくくなります。

 


4歳でバイオリンを始めたときから、「レッスン前は ”よろしくお願いします” と言って礼」「レッスン後は ”ありがとうございます” と言って礼」をしてきました。何も考えなくても、体と口が勝手にそう動きます。ですから自分が先生になっても、子供には必ず礼をするよう指導してきました。大人も、特に初心者さんには礼をするよう教えます。

 

けれど他の教室で習っていた経験者さんの多くは、しないことが自然のようです。経験者さんの多くがしないということは、そこまで指導した先生がしていない、ということになります。これに気づいたときは、少なからずショックでした。

 

自分が馬渕清香師匠に見てもらう時も、先生に礼をする雰囲気がないので、そういえば自分もしていないと気づきました。深山尚久のときもしなかったし、当然のことながらピエール・アモイヤル先生のレッスンでも礼などしません。秋芳洞室内楽セミナーでもしなかったぞ。

 

自分が教わるときは礼をしないくせに、教えるときは礼をしてしまう。まーなんと困った先生でしょう(笑)

 

礼は日本独特の挨拶です。西洋ではしません。バイオリンが上達してくると、西洋の先生に習ったり、西洋に出かけたりするようになります。そうなると、子供のときバイオリン教室で礼をしていても、音大へ進んでプロになるような人は、だんだん習慣がなくなるのかもしれません。

 

 

礼をしないことが自然な経験者さんが多いと気づいて、レッスン前後の礼をしないよう敢えて気をつけていた時期もあります。しかし、

 

①私の身にはしみついてしまっている
②子供の生徒には、その習慣を伝えたい
③武道をするとき、礼をするかしないかで、結果が違ってくる
④アマオケでは練習の前と後に礼をする

 

といった理由により、自分のしたいように振る舞うことにしました。

教えなくても先生につられて礼をするようになる方もおられますし、つられない方もいます。いずれでも構わないと思っています。

 

アマオケでは多くが、練習の前と後に礼をします。学校の授業のように全員立ち上がってしっかり礼するところもあれば、座ったままなんとなく挨拶をして始まるところもあります。立ち上がって礼をすると、学校ぽくって、懐かしいような清々しいような。悪い気分ではありません。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。