奈良の工房にて ビオラの毛替えと調整
2021/07/07
奈良の弦楽器工房へ、ビオラの毛替えと調整に行ってきました。
奈良市 富雄にある「岸野弦楽器工房」。
近鉄の富雄駅から徒歩数分のところにあります。
奈良県にあるバイオリン・ビオラ・チェロ専門の弦楽器工房は、ここだけらしいです。
楽器も弓も別々に選びましたが、どちらもイーストマン初期のものです。
重たくて反応が遅いのがストレスになっていて、軽くなる方向で、とお願いをしました。
♪ 弓の毛替え
ガッシリして重ための弓だったで、毛量を少し減らし目にしてもらいました。
長らくイタリア産のルッキにしていたのですが、こちらの工房にはなくて、ルッキと同グレードのカナダ産ソーデンというものを張ってもらいました。
一度バイオリン弓も、ルッキが無くて同グレードの他の毛にしてもらったことがあります。
その毛の弾きごこちは並グレードくらいにしか感じられなくて、即ルッキのある遠方の工房まで張り直してもらいに行きました。
今回のビオラ弓も、その心配がありましたが、それ以上に一度岸野さんにお世話になってみたいと考えていたため、トライしてみました。
帰宅して弾いてみた感じでは、大丈夫そうです。
♪ 駒の調整
20年なんのメンテナンスもせず使っていたため、指板が下がっており、弦高が標準より開いていました。
標準よりちょい(0.5ミリくらい)低めになるよう、削ってもらいました。
弦高とは、指板から弦までの高さのこと。
幅が広いと、大きく張りの強い音が出せます。
狭いと、押さえやすく優しい音になります。
そういえば弾きにくいと思っていました。
何年もかけて少しづつ開いてゆくので、なかなか気づかんもんです。
弦の幅をどうするか尋ねられましたが、これまでと同じ、標準よりわずかに狭い状態にしてもらいました。
駒の高さを削るということは、弦の幅も再設定できるのです。
バイオリンは欧米男性が固定化したサイズ。
弦高も弦幅も、少し狭めが私の手のサイズには扱いやすいです。
そういえば買ったとき、ネックを少し細くしてもらったのを思い出しました。
それでも私の手には、ビオラのネックは太いなあと感じますけど。。
E線の当たるところに象牙が埋め込んであり、駒の厚みは厚めに仕上がりました。
薄い方が鳴りやすいのですが、厚い方が歪みにくくなります。
一長一短です。
E線は4弦のなかで一番テンションが強く、駒に喰い込んできます。
そのため一般的には、透明の薄い皮を貼ることが多いのですが、象牙を埋め込む職人さんもいます。
私も、貸し出し用の楽器に皮を貼っており、生徒さんに応急的に貼ってあげることもあります。
老舗のバイオリン工房丸一でお世話になった職人さんが、皮を分けてくれて、処置の仕方を教えてくれました。
最近海外では、黒檀(こくたん)を埋め込んだりするそう。
黒檀は、バイオリン工房で使われる木のなかで、最も硬いものです。
ですから最も摩耗する指板に使われています。
安い価格帯の楽器は、弾いていると指先が黒ずんで、指板の色がだんだん抜けてくることがありますが、これは茶色い黒檀を、黒く塗っているのです。
♪ 駒と魂柱の位置調整
駒とナット(上駒)の間を「弦長」といいますが、私のビオラは「弦長」が長め、「駒~テールピース」が短めになっていました。
「弦長」と「駒~テールピース」の比率がきれいに6:1になっていると楽器の響きが良くなります。
私のビオラサイズは39.5のやや小さめなので、弦長を確保するためわざとそう調整した、ということも考えられます。
弦長が短いとテンション(弦の張り)がゆるみ、弱くて優しい音になり、扱いやすくなります。
張りを高めると、大きくて強い音が出ますが、反発が強くなり引っ掻きづらくなります。
駒の位置を少しナット寄りに変えてもらい、それに合わせて魂柱もずらしてもらいました。
♪ビオラのA線のアジャスターに、ヒル型が無い
のが前々から疑問だったので、尋ねてみました。
まず、弦の端の形状(ループかボールか)と、アジャスターの形状はセットであること。
ビオラのA弦にループエンドが存在しないのに、ヒル型を作ってもしょうがない。
(それは私も気づいていました。)
また、L字型アジャスターだとA線の「トータルの弦長」が短くなり、テンションがゆるくなります。
A線のテンションがゆるい方が、楽器にかかる負担の左右差を減らせるという側面もある、とのこと。
それならバイオリンにも、L型アジャスターでE線側にかかるテンションを減らす、という考え方があっていいかもしれません。