上手になる大人の生徒さんがしていること
2023/04/22
大人の生徒さんは、上手くなろうと皆さん真剣です。自分の意志で来ているからです。みな真剣なのに、先生は同じなのに、上手になっていく生徒さんと、そうでない生徒さんがおられます。
「年齢」「才能」は変えようがないので仕方ありません。それ以外の、命運?をわける要素は何でしょうか。
♫ 二度同じことを言われない。一度で直せなくても、なんらかの改善・前進・変化をしてくる。
前回より前進してきたかは、すぐわかります。たいていレッスン内容を踏まえた練習をしてきています。
変化の理由がわからなければ、どんな練習をしていたかお聞きして、レッスンの参考にします。
レッスンでは、今の弾き方を見て、今取り組むべきことは何か考えます。前回アレをやったから今回はその続き、という大筋の計画はありますが、現状どうなっているかを一番大切にします。今の弾き方を見て、前回と同じことが思い浮かぶということは、生徒さんが変化していないということです。
以前も書いた話ですが、コロナ第一波で3カ月レッスンをお休みした生徒さんが戻ってきたとき、上手になっていました。どんな練習をしていたか尋ねたら、鏡に向かって弾いていたと。コロナ前に、鏡を使った練習方法を、彼女に教えていたのです。
全然弾けるようにならない、と、いつもボヤいている生徒さんがおられました。1年ほど他の先生に習って、再び戻ってきました。あなたの課題は〇〇です。私もレッスンの度に〇〇していましたよね。と話したら、そうだっけ?という顔をされました。
♫ 自身の変化を感じとるセンサーを磨く
生徒さん自身が、ご自分の変化(上手になっている)を自覚していないことがあります。
また、前回言われたことに気をつけて練習したのだから、変化しているに決まっている、と思い込んでいることもあります。
生徒さんは自分を毎日見ているから変化がわかりにくく、先生は一週間ぶり(またはそれ以上ぶり)で見ているから変化を捉えやすい、という側面もあります。
自分の変化を感じ取れるほど、上手になるための施策がみずから打てます。レッスンを重ねるうちに、だんだん捉えられるようになっていきます。
左指の押さえ方が良くなった生徒さんに、前回に比べて良くなりましたね、と声をかけたら、前回レッスンで教わった練習をしていたとのこと。ただ自分が良くなっている、という自覚はなかったそうです。今後レッスンを重ねるうちに、センサーも磨かれていくでしょう。
左手首の角度に変化のない生徒さんに、まだ直ってませんか?と言われたこともあります。直ったつもりでいたのです。左手首は少し根気がいります。
♫ バイオリンの練習時間は、日常生活のなかに組み込む
バイオリンの練習は、日常生活の予定のなかに組み込みましょう。毎日少しづつ練習するのが一番いいのですが、そうできない場合でも「時間があったら練習する」ではなく、食事や仕事のように、曜日や時間帯を決めて練習時間を確保しましょう。
イレギュラーなことが起こりやすい方は、予定を決めにくいかもしれません。でも何らかのルールは作れると思います。とくに子供は、1日のタイムテーブルが、日によって大きく変わらないことが大切です。
また私のレッスンでは、バイオリンを弾いていない時間にできる身体感覚の練習を、お伝えすることがあります。それも、いつそれをするのか、決めてしまうのが効果的です。
♫ 集中した質の高い練習を、短時間・多回数
短い時間、毎日練習するのがいいのです。1日2回練習するのもいいです。何を課題としているのか、目的意識を持ってやりましょう。
早く上手になりたいばかりに長時間練習して、体を痛めてしまう生徒さんが時折おられます。よい演奏フォームが作れていない状態での長時間練習は、故障するためにやっているようなものです。自分の体に対するセンサーがあれば、なにかおかしいな?と痛める前に気づくこともできます。
♫ 自分の機嫌をじょうずに取る。
毎日30分練習する!と決めたとき、週何回以上練習できたら自分をほめて、何回以下だったら自分を戒めるかは、人によって違います。練習したくない時の自分への声かけ、練習しなかった自分の叱り方・許し方など、自分に最適バランスの「甘やかし」と「戒め」を用いましょう。
自分は下手だ、自分は頑張れない、と責めてばかりの人は、上達しません。甘やかしていても当然上手になりません。自信と謙虚さのバランスが大事です。
通して弾くときは一喜一憂しない。ミスしても成功しても、それに対する「感情」は過去においていき、眼前にある音符を弾くことに集中しましょう。
♫ レッスンは一定の間隔で受ける
レッスンも、受けるなら一定の間隔で通うのがいいでしょう。生活習慣病をお医者さんに診てもらうときは、一定の間隔で病院に通います。バイオリンのレッスンも、その方がより充実した内容になるでしょう。教える側からすると、一定の間隔でおいでになる生徒さんの方が、だんぜん教えやすいです。
練習ができていないときも休まず(その人のタイプによります)、先生にそう伝えましょう。言い訳ではなく、よりよいレッスンを受けるための状況説明です。
レッスンに通うことがマンネリ化してきたと思ったら、思いきって暫く休んでもいいと思います。
先生に合わせるのではなく、自分はこういうタイプだから、こういう性格だからと理解してもらう努力をし、先生に自分仕様になってもらいましょう。
♫ 書く。消す。鉛筆は常に携帯
レッスンで琴線に触れたことをサッと書く生徒さんは、ほぼ間違いなく上手になります。
レッスン直後に、忘れてはならじと楽譜を取り出し書き出す人も、幾人か知っています。先生の家の前で、駐車場の車の中で、帰りの電車の中で。
書き方、書く内容は、自分にわかればいいです。後から読み返して思い出せればいい。
もちろん記憶できることは書く必要はありません。特にレッスン中は、憶えておけることは書かない方がいいです。その分 気が散ります。書く時間もムダです。
私が子供のときレッスン中は、母親が手元でメモを取っていました。家に帰ると母は、黒鉛筆・赤鉛筆・青鉛筆を使ってきれいな字で楽譜に書き込みました。
アマオケの練習では、指示されたことを楽譜に書き込むのが当たり前です。鉛筆を持っていないと、厳しいオケでは注意されます。
楽譜への書き込みは、情報が不要になったら、「消す」作業を行うとなおいいです。とくに指番号、音程の高い低い、指のくっつくはなれる等、左指の情報を消す効果は絶大です。情報を消した譜面を見ながら弾いているうちに、情報なしで読めるようになります。
♫ 常に改善をこころがける
バイオリンの練習の仕方、日常生活への組み込み方、レッスンの通い方。
いずれも常に改善、微調整してゆきましょう。