バイオリン・ビオラ 松脂の選び方
2023/08/06
松脂の選び方について、参考になればと思い、まとめてみました。
♫ 松脂にこだわるより、腕を磨こう
松脂の違いによる「音質」や「技術(弓の返しなど)」の差は、腕前の違いによる差に比べれば、無きに等しいです。
♫ 1000円~2000円のもので充分
これまでに私が使った松脂は、ヒル社の茶巾タイプ、クロネコライト、クロネコダーク、ベルナルデル、セシリアのピアチェーレ、アルシェの緑の紙箱・緑の布につつまれた黄色い松脂(最近見ない)、などです。安い順から並べてみました。
安価な分数バイオリンセットに楽器店や工房がよく付けてくれるのが、ピラストロ社のピラニートです。昔はハイダージン社の蓋カパタイプをよく見かけました。これらは1000円を切る値段です。
また千円単位のちょっとした値差で、可愛いオシャレなものも手に入ります。可愛いものにつられる子には、バイオリンケースの素敵なものを買うより、安上がりです。
♫ 粘度の低い、明るい色の松脂がいい
このところ、暗めの粘度の高い松脂がよい、と言われているようです。あるとき生徒の買ってきた分数バイオリンにクロネコダークが付いていて、それが1回きりではなくて、世の中の流れを知りました。昔はバイオリンにクロネコライト、ビオラ・チェロにクロネコダークでした。
それでバイオリンにクロネコダークを使ったり、セシリアのピアチェーレ(暗め粘りめ)を使ってみたのですが、ベルナルデルに戻りました。
※だいぶ前に買った自宅用ベルナルデルと、去年買った外出時用のベルナルデルがあります。レッスンに出かけるときバイオリンケースに入れ忘れることがあるので、2個体制にしました。ところが新しいほうの使い心地がよくないのです。枚方の職人さんが「昔と違う、質が落ちてる」と。言われてみればそうかも。職人さんに昨今のお勧めを聞いたら「ベスポーク」とのことです。
暗い松脂がよい、と言われる理由は、粘度があるため吸いつきやすいからだそうです。しかし多少弓が浮いても音が出てくれるのは、粘度の低い松脂のほうです。粘度の高い松脂は、一度弓が弦から浮くと、戻りにくいです。人によってクセも違うため、万人に「粘度が高い=音が出やすい=弾きやすい」とは一概に言えないと思います。
私が粘度が低い松脂をおすすめする理由は、弦が長持ちするから。弦をこする感触が長持ちするからです。粘度が高い松脂は、弦にこびりついて、拭いても取れにくい。
弓の毛で弦をこすったときの感触に敏感だと、新品の弦を張って何週間か何ヶ月か経つと、「フィットしなくなった」「ゴワゴワしてこすりにくくなった」と感じるようになります。松脂の粘度の違いで、この期間の長さが変わります。
粘度の高い松脂は、塗りすぎも禁物です。
暗めの松脂は、夏に形が崩れやすいです。子供の分数バイオリンはあまり大事にされないからか、クロネコダークが円柱からプッチンプリン形になります。子供の松脂は特に、明るいものがいいと思います。
♫ 松脂の梱包
松脂を取り出してから塗れるまでの時間が短いほうが、練習意欲をそぎません。蓋をカパッと開けたらすぐ塗れるタイプ、いくつか出ています。私は子供のころ、茶巾タイプの松脂でさえストレスでした。
梱包がシンプルな松脂のほうが、落としたときに割れやすいでしょう。
ベルナルデルは二階から落としても割れそうにありません。しかし①袋から取り出して ②くるんでいる布を開いて ③塗りやすいよう握りなおす という手順が面倒です。
子供に練習してもらうには、すぐ塗れる松脂がいい。実際そうしたものが付属されることが多いのですが、落として割りやすいのも子供です。
私のベルナルデルは、出し入れのストレスをちょびっとでも軽減すべく、布の端を切っています。(標題の写真を参照。布にプリントされたベルナルデルの文字が、ほとんど無くなっています。)
ピラニートも、蓋をカパッと開けたあと、布をどけなければなりません。このひと手間が結構めんどい。布の端を切れば早く塗れると思います。布が減ると衝撃に弱くなることに留意してください。
ピアチェーレなど、蓋カパタイプで布がない松脂もあります。一度床に落としたことがあり、台と松脂のあいだを割ってしまいました。
蓋カパタイプは、台や蓋がプラスチックのものが多いですが、木や皮やコルクなど自然素材のものもあります。自然素材だと手に持ったとき気持ちよく、衝撃にも強いでしょう。