基礎練習 教本と使い方 [4] ポジション移動
2020/05/23
私がレッスンで用いている基礎練習用の教本と、その使い方をご紹介しています。
教本によって使い方が違うので、教本別に説明します。いずれの基礎練習もそうですが、曲のなかの練習でことたりる、またそれが向いている生徒さんの場合、むやみに別教材は用いません。
ポジション移動の練習として、指板の上で指をすべらせる動きを反復してもらうことがあります。この練習は単に、左手の形を整えるため行ってもらうこともあります。
左指の置き方が良くて、ポジション移動ができれば、ビブラートはできます。
(1)新しいバイオリン教本3
この教本は、2ndポジション と 3rdポジション を同時に練習するようになっていますが、まず 3rdポジションの課題からやります。
P13
◆3rdポジションだけのスケール
No.13~15、16~17、18~19、20~21、32
ポジションを移動する練習をする前に、3rdポジションだけの型の練習をします。
冒頭スラーがついていますが、型が良くなるまではスラー無しで。スラー無しからスラー有りへ、運弓を難しくしていく課程は、[1]スケール (3)練習のしかた ◆運弓 を参考にしてください。
◆1stポジション~3rdポジションを移動
No.24、25、27、29、30、31一部
いずれも1の指から始まりますが、1の指の小節はカットしたり、小節の順番を入れかえて後回しにしたりすることもあります。1の指は2・3の指と比べて、親指との間に不要な力が入りやすいからです。
”ひきずる音をなるべく入れない”と書いてありますが、それよりワープしないことの方が大切です。
ワープとは、1stポジションの場所から3rdポジションの場所へ瞬間移動しようとすることです。
ワープ癖を取るには、わざとひきずる音を出す練習をします。No.29のような中間音を入れる練習が有効です。
中間音を入れる練習はどんな素材を使ってもできます。スケールでも、エチュードでも、曲でもできます。
◆ポジション移動 2つのやり方
ポジション移動のときの親指の動かし方には、2つのやり方があります。
(A)「親指と4指を同時」に動かす
P14の3行目に、手全体のかたちをくずさずに移行、と書いてあります。
(B)「親指と4指を別々」に動かす
別々は、更に2つの方法があります。
(B)-1「親指が後」
(B)-2「親指が先」
P15下の写真は、親指を先に動かしています。
No.29で、親指と4指を別々に動かす練習をすることができます。親指を残すやりかたは、
①親指を1stの位置に残したまま、3rdへ上がる
②2分音符の途中で、親指を3rdへ引き上げる
③親指を3rdに残したまま、1stへ下がる
④2分音符の途中で、親指を1stへ引き下げる
3パターンの動かし方ができるようになると、安定したポジション移動ができます。ポジションが上がっても、またすぐ戻ってくるよう場合、親指を後にすれば、親指は動かさなくてすみます。逆もあり。練習すれば、ある程度 無意識に出来るようになります。
ポジション移動の技術を強化するのに最適の書です。
エチュード仕立てで実戦的です。
◆印刷のスラーは長すぎるので、半分にして、1小節でΠVと往復します。
◆また楽譜はすべてハ長調で書かれていますが、その音程に飽きたら、ト長調、ニ長調などに変えます。
◆一番上のポジションが高すぎる場合は、自分に適した時点で折り返すようにします。逆にもっと高く行くこともできます。
◆下りるパターンも作ってしまいます。
No.1を事例に取り上げると、6小節目の3拍目の最後の音を、2で取らず3で取ります。
次に5小節目を弾きますが、ここでも、3拍目の最後の音を3で取ります。
◆親指の動かすタイミングは、「親指と4指が同時」「親指が後」「親指が先」3パターン練習します。
難しい場合は、新しいバイオリン教本3 No.29 のようなシンプルな素材で練習しましょう。
「親指が後」「親指が先」の練習のしかたは、親指を動かす場所(音が長くて脳みそに余裕のあるところ)を決めて、心の中で「ハイ」と声をかけてあげます。慣れてくると、決めなくても、声をかけなくても、動かせるようになります。
左手の使い方が良ければ、曲をさらっているだけでも、身体は勝手に「親指が後」「親指が先」をするようになります。そのほうが楽だからです。
二度の移動を全部、No.7までみっちりやれば、そうとう力がつきます。若番ばかり、G線ばかりしないよう、まんべんなくやりましょう。
三度もやると左手が柔らかくなって、副産物?として十度の重音なども楽にできるようになります。ロマン派のバイオリン協奏曲を目指す方は、チャレンジしてみてください。
(3)ホーマン4
ホーマン4はポジション移動を鍛えるのに特化したテキストではありませんが、2nd から 7th までポジションごとの章立て になっており、エチュード仕立ての素材により楽しく学ぶことができます。
順番にやる必要はなくて、ポジションに入るときに使うならば 3rdポジション から始めたらいいし、偶数ポジションが苦手なら 2ndポジション → 4thポジション 、ハイポジションに挑戦したければ後ろの方をやればいいのです。
スケール/エチュード/デュエットと長さも調もリズムも多彩なので、スケール中心にやるとか、デュエット曲をチョイスするとか、色んな使い方ができます。基礎練習ちっくな見た目の楽譜が好きでない方に、向いています。
(4)そのほかの教本
「フリマリー」「小野アンナ」「カールフレッシュ」などは、スケール/アルペジオを用いた ポジションを練習する教材と言えるでしょう。これらの教本を生徒さんがお持ちの場合、その方に合うかたちで使います。
運弓の練習方法は、[1]スケール (3)練習のしかた ◆運弓 をご覧ください。
使いこなすのが難しいですが「ガラミアン」、これはとても潜在力のある教本です。私が知るなかで、最もすばらしいボーイングパターンが収録されています。運指/運弓のみならず、脳を鍛える使い方ができます。
「セヴシックOp.1-3」もポジション移動に特化した教本です。