基礎練習 教本と使い方 [1] スケール
2020/05/23
私がレッスンで用いている基礎練習用の教本と、その使い方をご紹介しています。
基礎練習のうち、最も早い段階から 最も多くの生徒さんに取り入れているのが、スケール/アルペジオ/3度のスケールです。
2019.12.23 レッスンの風景 事例集 に、どの生徒さんに どんな教本を使っているか、掲載しています。
[1]スケール、アルペジオ、3度のスケール
3度のスケールとは、
ドミレファ ミソファラ ソシラド シレドー と上がり、
ドラシソ ラファソミ ファレミド レシドー と下がってくるスケールの変形版です。下りは
ミドレシ ドラシソ ラファソミ ファレドー でもOK。
「子供のためのバイオリン教室 下巻」P42-3 がそれにあたります。
「新しいバイオリン教本3」No.61 もそうです。
No.61は、セヴシックOp.1-1 No.13 を易しくしたものです。
(1)目的、ねらい
①バイオリンの音程構造を理解してもらう
バイオリン・ビオラなどの弦楽器は、ピアノと違って、音程が一列にならんでいません。ハリセンのように折りたたまれています。
曲を弾くことで理解してしまう生徒さんもおられますが、そのことに体が反応しない生徒さんは、習いはじめと同時に1オクターブのスケールを練習に組み込んでもらいます。
●弦を移ることで、音程は連続的に上下する
●2の指は、高い場所と低い場所がある
●隣り合う指は、くっつくときと離れるときがある(半音と全音)
②よいフォームを身につける
生徒さんそれぞれの身体能力に合った課題を出します。
③ハ長調の左指の場所をおぼえてもらう
全弦&全指のハ長調のスケールをして、#♭のときどうするか教え、各自好きな曲がさらえるようになってもらいます。
④調が変わるときの左指の変化をおぼえてもらう
(2)使っている教本
①耳コピー
習いはじめたばかりの生徒さんには、まず耳コピーでします。年齢の若い生徒さんは、楽譜を見ながらより耳コピーの方が、集中できて体に入るようです。耳コピーの方が、その場でスラーやリズムを柔軟に指定できる利点もあります。
②手製のプリント
4弦&4指を網羅したスケール/アルペジオ/3度のスケールを、♭~###の5つの調で書いたプリント。
ト長調は「子供のためのバイオリン教室 下巻」P42 です。これを他の調にも展開したものです。
スラーやリズム変奏、ポジションの上下など、課題を難しくしていくこともできます。
家できちんと練習して欲しい大人の生徒さんに使います。こうした譜面づらが苦手な生徒さん、まじめすぎる生徒さんなどには渡しません。
③ヴァイオリニストのたまごたちの音階あそび
好奇心旺盛でゲーム的なやり方が合う子に、「ヴァイオリニストのたまごたちの音階あそび」を使うこともあります。サイコロの出た目によって、どう弾くかが決まるルールになっています。
④フリマリー、小野アンナ、カールフレッシュ
ポジション移動の最後で述べます。
◆調
①イ長調かニ長調からスタートします。子供は可聴音域が高いこともあり、イ長調が始めやすいことが多いです。両端の弦は弾きにくいので、大人の生徒さんはニ長調からが多いです。ピアノなど習われて絶対音感がある方は、ハ長調がやりやすいことも。
②生徒さんの様子をみて、やる調を増やしてゆきます。
◆運指
①0→1→2→3
②0→1→2→3→隣の0 上下
③0→1→2→3→0→1→2→3でスケール上下
④少し慣れてからアルペジオ/3度のスケール
◆運弓(ロングトーン)
①1音を1拍、弓のまんなかで
②1音を2拍、弓を大きく使って
③1音を4拍、全弓で
④1音を2拍で、2音をスラーで全弓
⑤1音を1拍で、4音をスラーで全弓
⑥1拍に2音入れて、全弓で8音
⑦1拍に4音入れて、全弓で16音
③以降は1拍60の速さで行う。時計の秒針を見ながら弾きます。メトロノームを使った方が良いケースもあります。
弓に2等分or4等分の印をつけ、印を通過するタイミングで音程が変わるように弾く。
弓先はチップに乗りあげるぎりぎりまで、弓元は金具に当たるぎりぎりまで。
視線を釘付けにしない。身体がこわばるから。
①1音を2拍、弓の上半分で
②1音を2拍、弓の下半分で
◆運弓(マルトレ・デタシェ)
①1音を1拍、弓の上1/4で、デタシェ
②1音を1拍、弓の下1/4で、デタシェ
③1音を1拍、弓の上1/4で、マルトレ
④1音を1拍、弓の下1/4で、マルトレ
1/4 ができたら 1/8 で。
⑤1音を1拍、4音マルトレ全弓
⑥1音を1拍、2音マルトレ上半分
⑦1音を1拍、2音マルトレ下半分
そのほか、生徒さんごとに必要そうな課題を考えます。