中川恵バイオリン・ビオラ教室

牛のはなし

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牛のはなし

牛のはなし

2019/10/01

9月下旬、バイオリン・ビオラ教室をお休みにして(レッスンご希望のあった生徒さんたち、すみませんでした。)北海道の牧場へ行ってきました。

WWOOFという「寝食」と「労働」を交換する制度で、8泊9日滞在しました。

 

 

北海道の、真ん中と北の端を結んだ線の中ほどに、「美深(びふか)」というJRの駅があります。そこから東へ20数キロ、「仁宇布(にうぷ)」という集落に牧場はありました。さらに東へ20~30キロ行くと、オホーツク海に出ます。

 

関西から移住した塩崎さんご夫妻と子供4人、ステイ中の子供1人。牛のほかに鶏8羽・羊1頭・猫3匹など生き物たちがいっぱい。テレビは無いのですが全く気になりません。

冷蔵庫は屋外にあって冬は電源を落とす、など私と共通点が多い暮らしぶりでした。

ご夫妻は関西出身ゆえ、北海道なのに会話は関西弁。たまに外で ”あなたイントネーション変ね” みたいな顔をされて、そうだここは北海道だった!と気づくのでした。

 

 

日本の多くの酪農家さんは放牧しません。牛は搾乳や掃除のときをのぞいて、せまい牛舎のなかでご飯を食べ、うんちをします。

 

牛をまったく歩かせない飼い方もあります。牛を動かさないで搾乳します。方向転換もさせず、お尻の位置も変えさせないので、排せつ物の処理もシステマティックにしやすいのです。牛は舎に入るとき、殺されるため舎から出るときだけ、歩くことを要求されるのです。そんな牛は歩き方が分からない、歩けないそうです。

 

私が「仁宇布(にうぷ)」の前にWWOOFした牧場では、牛たちの行動の自由度はそれなりにありましたが、足元は糞尿でぐずぐずでした。しゃがみたくなったら糞尿に浸るか、浸りたくなければ立っているしかないのでした。

 

 

牛飼いの日々の仕事は、搾乳、餌やり、掃除、この3つです。放牧すると餌やりと掃除がかなり楽になります。放牧は人間にとってもメリットがある飼い方なのです。

 

 

放牧して牧草が主食になると、牛は乳をあまり出さなくなります。というか、本来の乳量に戻って行きます。舎飼い&穀物飼料の半分くらい。つまり収入が半分になるのです。

でも支出が少なく利益は出ている、精神的にゆとりがある、と塩崎さんは言いました。乳牛ホルスタインは、人間が無理な改良をして乳量を増やしたのです。

 

放牧は、牛1頭につき1ヘクタールの牧草地が必要と言われます。塩崎さんの牧場では、子牛も含めて50頭で、牧草地は100ヘクタール!

食べ放題!

木立もあり、渓流もあり、起伏もあり、遊び放題!

牛は立って食事をしているか、しゃがんで休んでいるかのどちらかです。その牛たちの足腰のガッシリしていること! 牧草をしっかり食べている牛らしく、お腹が横に膨れています。

 

 

牛を移動させるのを「牛追い」と言いますが、素人には大変難しい。だんだん慣れてくると、塩崎さんが搾乳の準備をしている間に私が1人で「牛追い」へ行くのですが、牛たちのご機嫌がうるわしくないときは1時間かかります。

 

牛は集団生活を営む動物で、食事タイム、水場へ行くタイム、座って休息タイムなどがあります。”さて、もうちょっと牧草を食べるか” みたいなタイミングで牛追いに行くと、ハズレです。大声を出しても、お尻を押しても、優しく話しかけても動きません。でもボス(塩崎さん)が呼ぶと動き出します。

 

 

朝は5時半に、外にいる牛たちを呼び集めて、搾乳をします。牛たちを外へ出したら舎の掃除。

夕方4時半、遠くの放牧地の牛たちを呼び集めて、搾乳します。終わったら舎のすぐ外の牧草地へ出し、掃除。

5月中旬から11月中旬は、これだけです。

 

呼び集めた牛をつなぐ時、ほほを私に摺り寄せてくる子もいました。でっかい目が至近距離からこちらを見つめています。子牛は脚が細くて身体が小さく、でっかい目と耳は 小鹿のバンビちゃんのようです。

 

11月中旬~5月中旬、牛たちは牛舎で過ごします。(積雪しても放牧地で過ごさせる、牛舎のない牧場もあります。)そのため人間が餌やり&掃除をせねばなりません。

1頭あたり1日に、数十キロの牧草を食べ、数十キロの糞尿を出します。牧草は、夏の間に刈って保存したものです。

 

 

牛は牧草を食べる生き物なのですが、乳をたくさん得るために人間は穀物飼料をやります。米国などから輸入された遺伝子組み換え、収穫後にも農薬をかけた餌です。さらに欲を出して牛骨粉などもやります。

 

家畜への抗生物質の投与について、こんな論調を耳にしたことはないでしょうか。抗生物質の投与しすぎが良くないことは分かっている、耐性菌が出現する、でも病気を防ぐ有効な手段だから止められない。

確かにその通りなのですが、もう1つあまり知られていない、投与する理由があります。微量 且つ長期間与えると、家畜が早く大きくなるのです。

メカニズムは未解明ですが、かかる飼料代に比べて、得られる乳量や肉量が増えるのです。

日本では年間200トン以上の抗生物質が家畜の飼料に添加されていて、糞尿中には耐性菌が増えることが分かっています。

 

 

 

塩崎牧場では尻尾を切っていません。そのため、搾乳前のチチを拭いている私の顔めがけて、うんちの付いた尻尾をはたく奴もいました。正確にヒットするので、あれは絶対悪意あると思います。

 

また牛は、メスでも角がある動物です。角があると、牛にその気がなくても、人に怪我させてしまうリスクがあります。塩崎牧場でも迷っているようで、除角してる子としてない子がいます。

 

多くの牧場では、尻尾も角も「節約」「効率」のため麻酔をかけないで切断します。牛の角は、神経も血管もつながっていて、切ると血が噴き出し、焼きゴテで止血します。失神したりショック死する子もいます。

NHK朝ドラ「なつぞら」の時代は、除角自体があまりされていなかったそうで、本当は牛に角がないといけなかったようです。

 

 

牧場での滞在記を書くつもりが、牛の飼い方についての熱弁をふるってしまいました。

帰宅して玄関のドアを開けると、建材の化学物質臭がしました。長期間 閉め切っていたから溜まったのでしょう。普段気づかずに吸ってるんですね。

 

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