顎当ての交換 や 高さ調節
2020/10/26
顎当ての交換や高さ調節は、自分でもすることができます。
今お使いの顎当ての形状(モデル)が、自分に合っているか気にかけましょう。
自分で顎当ての交換や高さ調節をしたあとは、毛替えなどでバイオリン工房へ出向いた際、”自分でしたんですけどおかしくないですか?” と職人さんに見てもらうと良いでしょう。
■どんな顎当てがいいの?
顎当ての高さは、楽器底面のエッジ中央が、左鎖骨(の右端)に触れるくらいがいいです。
私も含め現代人は、鎖骨が、身体本来の位置より下がってしまっていることがあります。
その点も加味して、顎当ての高さを決めましょう。
顎当てのカーブは、左下顎と合わなすぎても違和感があるし、ぴったり合って遊びが無いのもいけません。
顎当ての原型が作られたのは200年程前ですが、今に近いものになったのは100年ほど前とされています。(詳しくは不明です)
肩当てはさらに後で、1900年代半ばでも、まだ肩当てをすることは一般的ではありませんでした。
肩当てが登場する前は、楽器底面のエッジ中央を、左鎖骨の上に乗せていました。
顎当てを作ったり削ってくれる職人さんもいます。しかし手間がかかる=作業代がかかる上、気に入るようにはなかなか仕上がりません。何個も職人さんに削ってもらい、自分でも削ったことのある私の結論です。市販の選択肢のなかから選ぶのが、現実的だと思います。
欧州の工房で作られた顎当ては、1点1点ビミョーに違います。ロットが異なると、全然違う商品じゃん!と思うこともあります。
同じ製造元、同じ名称の商品なら、寸分たがわず同じでしょう!という日本的な文化ではないのだと思います。
友人のが良かったから、と取り寄せ注文しないように。現物を確認して購入しましょう。
製造メーカーや商品によっては「寸分たがわず同じ」な場合もあります。プラスチックやカーボンなどの成型ものは大丈夫です。
顎当ては、脚がテールピースをまたいでいるタイプの方が、楽器を痛めません。エンドピン周辺は弦の張力がかかる部位なため、楽器内部に補強材が入っています。またぐタイプだと、ちょうどその補強材のところに脚がきます。両脚がエンドピンの左側にくる顎当てだと、外側の脚を補強のない箇所に止めることになり、長年に渡ると楽器の表板・裏板が凹むこともあります。
楽器の健康を考えると、またいでいるタイプがいいでしょう。しかし人間の健康のほうが大切です。顎当ての脚の締め具合は強すぎないように気を付けましょう。弱すぎると顎当ての位置がずれてきます。
■取り外し方、取り付け方
見たとおりの機構です。
金具の脚の穴に、棒状のものを差し込んで、ネジを緩めたり締めたりします。
専用の器具がこちら↓
むかし顎当てには必ず、ちっこい専用器具がオマケのように付いていました。しかし捨てられることが多く、コスト削減もあったのか、姿を消してしまいました。専用器具が無い場合は、代用品になりそうなものを見つけてください。布団針が使える、と聞いたことがありますが、試したことはありません。楽器本体に傷をつけないよう、気をつけてください。
顎当てを取り外し、取り付けした後は、顎当てとテールピースが触っていないか、必ずチェックしてください。見えないときは、紙などを隙間に差し込んで、通るか確認します。紙が通っても、顎当てとテールピースが近すぎると、干渉して異音の原因となります。
気に入った顎当てがテールピースに触ってしまうと判明しても、諦めるのは早いです。顎当ての底面を削るのは、よくある対処法です。またテールピース側を削ったり、交換することもできます。バイオリン工房の職人さんに相談しましょう。そういう相談に乗ってくれる人の、お世話になりましょう。
■高さ調節の仕方
顎当てを低くしたい場合、低い肩当てに交換するのがいいでしょう。大人のバイオリンで顎当てを低くした方がよいケースは少ないですが、ビオラや分数バイオリンではよくあることです。ビオラが弾きづらく感じるときは、顎当てが高すぎないか確認してみましょう。バイオリンを構えたがらない子供の顎当てを低くしたら、突然弾き出したこともあります。
顎当てにくっついているコルクがぶ厚ければ、削って低くすることも可能です。しかし わずかしか変わりませんし、コルクが削れるほど厚いことはあまりありません。コルクは年月が経つにつれて へたって薄くなるもので、薄すぎると楽器への負荷が増すので、基本削らない方がいいです。
顎当てを高くしたい場合は、コルクを足します。ワインのコルク栓を削ってもいいですし、100均やホームセンター等で探すと、コルクのコースターなど使えそうなものが見つかることもあります。
枚方のバイオリン工房で職人さんに「お使いのコルクを分けて(買わせて)ください」と頼んだら、「その辺で買ってきたものです」と言われました。(笑)
楽器を平らに構えすぎるクセが治らない場合、顎当ての右側だけ高くして(& 肩当ての右側を低くして)もいいかも知れません。
どの程度までならコルクで高くしても問題ないのか見解は分かれるでしょうが、過去最高の高さでは、硬い紙を折りたたんで挟み7~8mm高くしてあげた生徒がいます。自宅教室ならいつもコルクがあるのですが、楽器店の教室だったので、その場のモノでしたのです。「責任持てないよ」と断った上でやりました。
数mmよりも高くしたい場合は、高い顎当てへ交換しましょう。