バイオリン/ビオラの拭き方
2022/09/22
バイオリン/ビオラを弾いたあとは、しまう前に布で拭きましょう。拭くことで良い状態が維持でき、余計な出費も防げます。
汚れは大きくわけて2種類あります。松脂と皮脂です。汚れの種類が違うので、布は2枚要ります。
弾いた直後なら、汚れは取れやすいです。時間が経過すると、取れにくくなります。拭かないまま次の練習をすると、汚れが溜まってゆきます。ですから松脂を塗るのと同じで、自分なりのパターンを決めて、毎回のルーティンに入れましょう。
バイオリン/ビオラは、ピアノなどと比べると、準備&片付けに時間のかかる楽器です。しかし組み立て&分解が必要な管楽器に比べると実は早いんですよ。アマオケなどに入るとわかると思います。
しまう前に拭きましょうね!と先生に言われても、準備と片付けのめんどくささのために練習しなくなってしまうのは、本末転倒です。ですからどこまで丁寧に拭くかは、それぞれ決めてください。性格や生活習慣は人それぞれです。子供の生徒の楽器を見て、あんまり拭いてないな~と思っても、先生はうるさいことは言いません。
バイオリン/ビオラを習い始めるときに、拭き方の説明は必ずしています。しかし習い始めたときにしか言わないので、え?そんなこと教えてもらったっけ?という生徒さん、おざなりになっている自覚がある生徒さんは、この記事で復習してみましょう。
●布の素材
きめが細かくて柔らかく、けば立たない綿がベストです。昔ながらのハンカチ、手ぬぐいなど。リネンもいいでしょう。
バイオリンを買うと、マイクロファイバークロスがもらえることがあります。メガネを拭くときに使う、アレです。バイオリンを拭くためにくれるのですが、使い方には少し注意が必要です。
●皮脂の拭き方
一番汚れやすいのは、顎当て&テールピースと、首にあたっている側面です。
顎当ては、お皿の角の部分が一番汚れます。テールピースも、皮膚が触っているところに皮脂がつきます。これらを放置すると、数日~数週間で垢が溜まっているのが目に見えるようになります。
側面は、拭かずにいると、顎当ての金具がだんだん曇ってきます。数カ月~数年で青カビ(緑青)が発生し、ひどい場合は、顎当ての修理 or 買い替えが必要になることも。
金具についた汗を放置すると、金属アレルギーも発症しやすくなります。金属アレルギーは花粉症と一緒で、なんともなかった人が突然なります。金属アレルギーの人向けに、プラスチック製の顎当てや、顎当てカバーが発売されています。それくらい金属アレルギーの人がいるということです。
首や顎のほかに、バイオリンと皮膚が触れるのは、左手です。指板の上、親指をはわせるネック、ポジションを使うばあいはヒールや本体の肩のあたりも触ります。
指の腹に汗をかいたら、必ず指板の上も拭きましょう。駒のあたりから弦と指板のあいだに布を入れて、上へスライドさせます。
皮脂がつく場所の材質は、
①顎当て・テールピース・指板(黒檀やローズウッドなど硬めの木、染み込むタイプのニス)
②顎当ての脚(金属)
③ネック・ヒール(メイプル、染み込むタイプのニス)
④バイオリン/ビオラ本体の肩(表面を覆うタイプのニス、メイプルとスプルース)
と多様です。金属部分とバイオリン本体では、材質の傷つきやすさがかなり違います。
バイオリン本体は、強い素材でゴシゴシ拭いてはいけません。ニスが削れてしまいます。マイクロファイバークロスなどを使うばあいは、やさしく拭きましょう。(そもそも④を拭くのに、マイクロファイバークロスはお勧めではありません。)
硬い部分はゴシゴシ拭いてもいいのですが、①~④の材質ごとに布を変えたり、拭き方の強さを変えるのは、現実的ではありません。私は、きめが細かくて柔らかくけば立たない綿で、全部やさし目に拭いています。
取りはずしてストックしてある顎当てに、青かびを発見することもあります。ひどくなると金属と木の接点がぐらぐらになって、どちらのパーツも使えなくなります。しばらく使わないフィッティングパーツは、しまう前に丁寧に拭きましょう。
(左)プラスチックの顎当て (右)顎当てカバー
分数バイオリン用を多く揃えています。
●弦についた松脂の拭き方
松脂が一番付着するのは、弦です。松脂がつきすぎた弦は、弾きにくくなるので、バイオリンの練習を終えてしまう前に必ず拭きましょう。練習の途中で拭くこともあります。
弦についた松脂は拭かずにいると、時間とともに硬質化し、分厚くなってゆきます。音質が悪くなり、弾きにくいため良い演奏フォームが身につかず、弦の劣化がはやく進みます。
松脂はねとねとしています。柔らかい布で拭くときは、少し強めに押し当てましょう。キーキーと音が立つ強さで拭く人もいますが、それは強すぎると思います。私はその手前くらいの強さで拭いています。
新品の弦を強めに拭くと、布に黒い汚れがつくことがあります。以前は「汚れがよく取れてる」と考えていたのですが、今は「取りすぎ」だと考えています。黒い汚れは金属カスではないでしょうか。弦から油分をうばい、弦の表面を削っているのではないかと思います。松脂は研磨剤でもあるのです。
黒い汚れがつくとすれば、それは最初の数回だけです。最初はやさしく拭いて、弦がちょっぴりくすんできたら強く拭くようにしています。
私は柔らかい綿を使っていますが、マイクロファイバークロスを使う場合は、弦を削ってしまわないよう強さを加減してください。
弦に付着した松脂はたいへん取れにくく、練習後に毎回拭いていても日々劣化を感じ、数週間後には交換したくなります。なんとか弦を長持ちさせたくて、いろんな拭きとり方法を試してきました。
①専用のクリーナー
それなりの値段するのに全く効果を感じられません。それどころか溶剤が弦に染み込んでいく様子が、かえって弦に悪いような気がしてきました。(気がしただけです。確証はありません。)
②アルコール
何度かやってみた実感としては、その時は松脂が取れて良くても、その後に弦が傷みやすい気がします。専用クリーナーと同じで、なにやら弦に染み込んでいくのが気がかりです。Warchal社という弦メーカーからも「アルコールで拭くことを推奨しない、かえって弦を痛める」との見解が出されました。
③楽器を拭く用の皮
化学的手法ではなく、物理的に取れないか?と考え、楽器用を拭く用の皮を使ってみました。皮は対象物に吸いつき、強く拭けるので、これじゃん!と思って使っていました。
ところが!弦が長持ちしないのです。よく観察すると、弦の表面がガサガサして荒れてきます。強すぎたようでした。
④紙ヤスリ
あまり大きな声では言えませんが、紙ヤスリで削っていたこともあります。松脂がこびりついてゴワゴワがひどくなってきた時に、1~2週間でいいから長持ちさせて、弦代を節約するためです。
普通に拭きとったあと、硬質化しているところをやさしく削ります。紙ヤスリ/布ヤスリは、目の粗さが「番手」という数字で表されます。家にあった #400 を使っていましたが、もっと細かい方が弦を痛めにくいと思います。
硬質化した松脂を薄くするていどに使い、弦そのものにまで到達しないようご注意ください。
●弦以外のところにつく松脂
松脂は、バイオリンの表板や弓の棹にも飛びます。弓の毛にぬる松脂が多すぎると、弾きにくいばかりか、表板や棹もまっ白になります。
どちらも拭くばあいは、表面のニスを傷つけないようにしなければなりません。しかし松脂はニスとの親和性が高く、ねとねとしているので、飛び散った松脂を取りきることはできません。松脂はニスの材料ではあるんでが。。
一番の対策は、弓の毛に松脂を塗りすぎないことです。
あるとき松脂を塗りすぎてしまう子がいました。練習後もバイオリンを拭きませんでした。松脂の適量をおぼえるより、バイオリンを拭くより、せっかく買ったバイオリンを弾いてもらうことの方が大事なので、ちょこちょこ指摘しながらも うるさく言わないでいました。
ある日レッスンに来たら、表板のニスと松脂が溶けあって固まっていました。夏でしたから、暑いところに一定時間 置いていたのでしょう。
安物のバイオリンは、樹脂をアルコールで溶いてスプレー塗ります。音色が悪く、木材への親和性や粘りがないため剝がれやすく、バイオリンを守るという保護効果も劣ります。本来のバイオリン製作では、オイルに松脂など複数の天然素材を溶かし、人の手で塗っては乾かすということを何週間もかけて繰り返します。
黒猫ダークの松脂を変形させた子もいました。本人は首を横にブンブン振っていましたが、おそらく車内への置き去りでしょう。んでなかったらお餅みたいな姿になるかい! それ以降 子供の松脂は、ベルナルデルを勧めています。(少しでも変形させないため!?)
●布はときどき洗いましょう
私は布を2セット用意していて、1~2週間ごとに洗います。