枚方市の工房にて 顎当ての高さ調節

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枚方市の工房 顎当ての高さ調節

枚方市の工房 顎当ての高さ調節

2021/09/04

枚方市のバイオリン工房 へ、駒の調整と、顎当ての相談に行ってきました。

 

 

安価な中古バイオリンをネットで買ったけど、調整のしかたや弾き方がわからない、とレッスンに来られる方が増えています。

ネットで買った安い中古楽器の多くは、修理を必要とします。


私が紹介する修理先は、預けることになる楽器店ではなく、その場で職人さんが対面で応じてくださる工房です。
たいてい大阪市心斎橋の杉本さん、枚方市樟葉の大島さん、奈良市の岸野さんのいずれかをご紹介しますが、京田辺界隈で教えていると枚方の樟葉が近い生徒さんが多く、昨今は毎週のように生徒の誰かが枚方市の工房を訪れています。

 

”最近はひどい状態の中古楽器が多くて・・” 

”例えばそれですか?”

と差された先を見ると、先週「要入院」との診断を下したばかりの生徒の楽器がありました。
”ペグが回りにくい楽器があって、枚方市の工房へ行くように伝えました” と言えば、

”数日前お越しになりました” との返答。

 

 

♪顎当ての高さ調節について

 

今日工房に来た一番の目的は、コルクを使った顎当ての高さ調節について、以下の点を確認したかったからです。


◆そもそも「コルクを挟んで顎当ての高さを上げる」ということを、してもいいのか?
◆私が生徒にしているやり方に(技術的に)問題はないか?

 

コルクで顎当ての高さを上げるのは、昔から良く使われている手法です。
バイオリン工房の老舗「丸一商店」に腕利きの職人さんが集っていた時代に、そこで、今は心斎橋にいらっしゃる杉本さんの手元を見て、私はやり方を覚えました。

 

何故かような疑問を持ったかと言えば、「コルクを挟んで高さを上げる」のは良くない、という見解の楽器店・職人さんに出会ったからでした。
その理由は以下のようなものでしたが、①については自分で見解を決めることができず、大島さんの意見を聞きたかったのです。

 

①すでに完成された商品として出荷されていて、顎当てを固定するクランプ部分の力のかかり方が変わり不安定になりかねない恐れがある。

②高さ調節は、顎当てより肩当てですべきではないか。肩当ては高さ調整が可能だが、顎当ては高さ調節ができるようになっていない。

③顎当ての高さを変えるとフィット感が変わるが、その変化が、高さの問題か形状の問題かわかりにくくなる。

 

♪なぜ顎当てで高さ調節をするのか?

 

②について。
肩当てによる高さ調節と、顎当てによる高さ調節は、人体に対する楽器の高さが違ってきます。

 

(a) 肩当てを高くすれば、人体に対する楽器の高さが上がります。
(b) 顎当てを高くすれば、人体に対する楽器の高さが下がります。

 

(a) と (b) は実際に弾き比べてみればすぐわかることですが、弾き心地が全然違います。
トータルの高さが合えば、顎当てと肩当てのどっちで調整してもいい、のではありません。

(a) = (b) ではありません。

 

想像してみてください。
表板の上に駒が立っていて、駒の上に弦が乗っていて、それを直角に引っかくことで音が出るわけです。
その引っかく位置の高さが、mm上がったり下がったりすれば、弾き心地・弾きやすさが違ってこないでしょうか?

 

バイオリンは数百年前、白人男性がサイズを固定化させた楽器です。
固定化される以前は、いろんな長さや幅や厚みのバイオリン属の楽器がありました。
当時は肩当ても顎当てもなく、バイオリンの裏板のフレーム、エンドピンのすぐ下あたりを、左鎖骨の上に乗せて弾いていました。

 

バイオリンという楽器の厚みは、どういう理由で決まったのでしょう?
音響的な要因もあるでしょうが、最も弾きやすい厚みだったのではないでしょうか。

 

バイオリンを鎖骨に乗せなさい、と教えてくれたのは、深山尚久先生です。
その時はただ素直に ”そうするのがいいんだ” と思っただけですが、理由・理屈を考え、自分の体で感じるうちに、確証に変わりました。

 

バイオリンが鎖骨に近づくように調整してあげた生徒は、みな ”弾きやすくなりました” と言います。
今のところ、バイオリンが鎖骨から離れた方が弾きやすいという生徒は、いません。

 

歴史的に顎当ては、肩当てより先に登場しました。

バイオリンと左顎のあいだの隙間を埋めた方が、楽器が安定して弾きやすいと考えたのでしょう。

そのあと肩当てが登場し、バイオリンと左肩のあいだを埋めることで、さらに安定感が増しました。

 

顎当ての高さを先に決め、次に肩当ての高さを決める、という順番が良いと私は考えています。

 

 

今日私が持ち込んだ自分の楽器は、2mmほどのコルクを挟んで高さを上げていました。

私の作業に問題はないですか?と尋ねると、特に、という返事でした。

工房で使っているコルクを分けてもらえませんか?と尋ねると、特別なものではありません、その辺で買ったものです、との答えでした。

 

そのやり方、こちら↓のブログ記事で紹介しています。

2020/10/26   顎当ての交換 や 高さ調節

 

こちら↓のブログ記事では、顎当てと肩当ての選択肢についてご紹介しています。

2019/07/25   顎当てと 肩当ての 合わせ方

 

 

 

 

 

♪コルクを挟むのは、顎当てという道具に良くないのか?

 

さて①ですが、”特にそうは思わない” というのが大島さんの答えでした。
”だいたい最初からコルクが付いています。コルクがへたってきたら、交換したり付け足したりします。”
そうでした。

 

私は大島さんが眉間にシワを寄せて、”ダメですよ、中川さん、そんなことしちゃ。邪道です!”とか言ったらどうしよう・・と心配だったのですが、杞憂でした。(笑)

まあそう言われても、生徒たちが ”弾きやすくなりました!” と喜んでいる以上、変えるつもりもなかったのですが。。

 

バイオリンは体を痛めやすい楽器です。

顎当ては道具です。

使いやすいように、道具は調整するものです。

私が言う前に、大島さんは私の想いと同じことを言ってくれました。

顎当てが壊れないようにして、人体が壊れてしまっては、本末転倒です。

 

 

最期に③についてですが、これは肩当てについても同じことが言えると思います。

 

 

顎当てを交換したほうが良いくらい、バイオリンと鎖骨が離れている生徒もいます。
顎当てだけのために楽器店・工房へ行けといっても、皆なかなか行きません。(今のところ0人)
顎当ての違いによってどれくらい弾きやすさが変わるかを体験しないと、腰が上がらないのも分かるので、フィッティング用の顎当てをバイオリン教室の備品として保有しています。

生徒が欲しがったら売ることもあるので、ときどき新しい顎当てを買って補充します。
今日も新しく2つ、高さが高めの顎当てを購入しました。

 

 

♪駒の高さの調整

 

 

指板は、指を置いている箇所が徐々にすり減り、宙に浮いている駒側が徐々に下がってきます。
そのため何年~何十年かに一度、でこぼこになった表面を削って真っすぐにしたり、高さの再調整をする必要があります。


私のバイオリンも、十数年 指板の手入れをしていなくて、弦高(指板から弦までの高さ)が開いてきていました。
G線側は標準くらい、E線側はやや開き気味とのこと。
(白人男性より)手の小さい私は、少し低めにするため、駒を削ってもらいました。


駒のカーブの具合も、A線に比べるとD線で両側の弦に引っ掛かりやすかったので、均等になるようお願いしました。
厚みも少し落としてもらい、左指が押さえやすく、楽器も鳴らしやすくなりました。

 

 

工房の机の上に並んでいる工具をなにげに見ながら、職人さんにとっての工具というのは、私にとっての弓みたいなもんだよな、と思うと、とてつもなく大切なものに思えてきました。

バイオリン工房でしか使われない特殊工具(上の写真の右端に写っている魂柱を調整する器具など)って年に何個売れるんやろう? そんな工具を作っているメーカーさんって素敵だな。

 

 

♪駒の位置の調整

 

調整した駒を設置したバイオリンの顔をじっと見ていた大島さんが、駒をE線側に少しずらしました。
これで弾いてみてください、と言われるので音を出してみると、更にハリのある艶やかな音色が出ます。
ナットからエンドピンまでの弦のラインが真っすぐになるよう、駒をずらしたのでした。

 

駒の部分だけ見て調整する方式では、F字孔を見て左右対称になるように駒を置きます。

しかしF字孔は必ずしも、楽器に対して左右対称ではありません。
楽器そのものだって、木でできているわけですから、パーフェクトに左右対称な物体ではないのです。
弦・駒・楽器のパフォーマンスを最大にする(最もよい音響状態にする)には、ナットからエンドピンまでの範囲が真っすぐで左右対称になるのがいい、というのが大島さんの考え方でした。

 

駒の調整に関しては、こちら↓のブログ記事にも書いています。

2020/10/11   バイオリン・ビオラ 駒の調整

 

 

♪弦長とテールピースの話


ナットから駒までの距離は「弦長」と言い、328mmあたりが標準のようです。

(職人さんにより、おっしゃる数値が微妙に違います。)

そして弦長と、駒からテールピースまでの距離の比率は、6:1が標準とされています。

弦のメーカーは、その条件下で、最も良い音質・音量になるよう、弦を設計・製造しています。

 

なぜこの比率が良いのかは、目下いろんな方が研究中のようです。

大島さんは今興味のあることらしく良くお話されるし、岡田信博さんの本でも取り上げられています。

この比率にすると、駒からテールピースまでの部分の弦の音程が、弦長の音程のオクターブ上や5度違いになるので、共鳴弦になっているという説もあります。

厳密にはテールピースの端よりもう少し先まで、弦の長さは続いているのですが。

 

私のバイオリンは絃長330mmだそうで、少し指板が長いみたいです。

そしてテールピースの長さも標準の11.5mmあるそうで、大島さんの目には、指板からテールピースまでの距離が少し窮屈そうに見えるみたいです。

テールピースは一般的に、標準11.5mmから、少し短めのものまでが、あるようです。

アジャスター一体成型のウィットナー社製のものは、かなり短めなので、いろんなサイズのバイオリンに適応させやすいとのこと。

 

工場製でないバイオリンは、1点1点手作りの工芸品なので、長さも幅も厚みも微妙に違います。
工場で大量生産された安価なモデルでも、バイオリンは木で出来ていますから、「超」微妙に違います。

テールピースが、標準の11.5mmより長いものはなくて、短めのものならある、というのも頷けます。

 

新作とオールドを比べたとき、縦の長さはあまり変わらないのに、左右の幅が細かったり、厚みが薄かったりします。

それは木材の繊維の方向が、縦に縮まないように使われているからです。

また昔の職人さんたちが、そういう型を使ったということもあるでしょう。

厚みについては、メンテナンスの度に楽器をこじあけなければならない、という要因も大きいです。

それにしても昔の人は、音響への影響も考えて、木材の方向を決めたのでしょうか?

 

 


バイオリンの顎当て、ペグ、テールピース、エンドピン、アジャスターなどは、交換すると音響が多少変わります。
音質を良くするために、材質を選んで変える方もおられます。
しかし道具類を見直すより、魂柱や駒の調整による変化の方がずっと大きいですし、腕前を上げることに如くものはありません。

 

修了後は、樟葉の駅前から伸びている大通りのバスに乗ってJR松井山手駅へ。

JR京田辺駅 や 近鉄新田辺駅 まで行くバス便もあります。

ほんとこの工房は京田辺から近いです。

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