バイオリンの弦を交換するタイミング
2022/11/26
毛替えのタイミングも人それぞれですが、弦を張り替えるタイミングも人それぞれです。趣味で弾いている場合は半年~1年と言われますが、一般論にしたがわなくてもいいと思います。
弦は徐々に古く悪くなります。弦の状態を見て交換時期を判断するのは、難しいでしょう。
♫発表会やアマオケの本番前に交換する
♫弓の毛替えと同時に交換する
♫切れたら替える(切れた弦だけ。または全部)
こんなところが実際的だと思います。
生徒には、以下のような状態になったとき弦の張り替えを勧めます。
また声かけのタイミングは、生徒さん一律ではなく、本人の感受性・好奇心・節約志向に応じて変えています。
①引っ掻きにくくなる
松脂がこびりついてくると、弦の表面がごわごわしてきて、滑らかに弾きづらくなってきます。弾いたあと 松脂用の布で拭きとって いれば、こびりつきを遅らせることができます。
私は3週間くらいでストレスを感じ出します。節約のため我慢して2カ月。大事な本番を見計らって、いつ交換するか決めます。
②黒ずんでくる(酸化)
指に汗をかく方は黒ずみやすいです。弾いたあとは、手垢用の布で指板を拭きましょう。
黒ずんだこと以外に問題を感じない場合は、黒ずみを交換の理由にしなくてもいいと思います。しかし黒ずみがひどい場合は、音色が悪くなっているでしょうし、切れやすくなっているはずです。よく見たら③巻き線がゆるんでいたり、⑤五度が狂っているかもしれません。
③巻き線がゆるむ
ナットや駒との接点に現われやすいです。シマシマ幅が広がって見えるのも、ゆるむ前兆です。バイオリンにかかる湿度や温度の変化が大きいと、シマシマは広がってきます。生徒がバイオリンの保管場所を改めたら、シマシマの幅が戻ったことも幾度かあります。
④巻きが浮いたり、毛羽立ってくる
左指をよく置く場所に、出がちです。指先に引っかかって押さえにくくなります。
⑤五度が狂ってくる
バイオリン/ビオラは自分の耳を頼りに音程を決める楽器なので、五度が狂っていないことはとても大切です。
開放弦をぴったり調弦してから、4の場所や、弦長の半分(フラジオレット)の場所などで、真横の音が五度になっているか確認します。
⑥音色が悪くなる
音色は徐々に変化してゆくため、音色が悪くなったとは なかなか感じられません。弦を新品に交換して音色が良くなったと感じなかったら、もう少し長く使ってもよかったかもしれません。逆に音色が良くなったと感じたら、次はもう少し短期間で交換してみてください。
楽器店や先生や職人さんは、「交換して音色が良くなったと感じられなくても、一定の期間で変えた方がいいです」と言うでしょう。私は生徒に、交換して良くなった(音色や、弓での引っ掻きやすさや、自分の気分)と感じなかったら、もう少し待ってもよかったかもね、と言います。生徒の出費をミニマムにしてあげたいと思うからです。
どう考えるかは自分次第です。
松脂や手垢を拭いていないバイオリンは、目視でわかります。弦や道具類ができるだけ長持ちするよう、生徒さんの年齢や性格に合わせてアドバイスしています。
4弦一緒に交換すべきでしょうか? と聞かれることがあります。新品でなければ4弦同時がいいと思います。
張り替えてまもない時期であれば、切れた弦だけでいいと思います。何日を「まもない」とするかは、ケースバイケースです。
新品の弦が切れることは、あります。予防策としては、
〇どこから買うか気をつける(保管場所が悪かったり、回転率が悪かったりすると、弦が劣化してます)
〇買ったあとの保管場所に気を付ける
〇張るときゆっくり音程を上げる
張りたての時期を乗り切った?ら、弦はそう滅多なことでは切れません。1本弦が切れたとき、前に交換したのはいつだったか すぐ思い出せないなら、4弦とも交換しましょう。
E線を酷使するプロの演奏家は、E線だけ、他の弦より短いサイクルで交換したりします。
EA線を、DG線の半分のサイクルで交換する、というバイオリンの先生にも出会ったことがあります。試してみましたがお勧めしません。A線とD線の五度がずれてしまいます。
E線がスチールの裸線で、ADG線がナイロン巻き線のばあい、E線だけをADG線と違うサイクルで交換するのはありです。しかしADG線に新しい弦と古い弦が混在しているのは、音色の点からも、五度が狂うことからも、よくありません。
アルミ巻とシルバー巻きの(切れやすさや劣化の)違いについては、まだ検証したことがありません。なにか分かれば報告したいと思います。
4弦のうち一番切れやすいのは、一番テンションのかかっているE線です。
弦の切れる箇所ナンバー1は、エンドボールとの継ぎ目です。新品で切れるのはココです。
E線のループエンドの場合、ボールとの継ぎ目は存在しませんが、ループとアジャスターの接点で切れることがあります。それを知っている職人さんは、アジャスターの角をヤスリ掛けして、切れにくくしてくれます。
ボールとの継ぎ目の次に切れやすいのは、駒・ナット(上駒)との接点です。ペグボックス内で、ボックスの縁や、他の弦に接触しているのも要注意。異音の原因にもなります。
駒・ナットとの接触部分については、4B鉛筆を塗って滑りやすく すると、予防になります。
はずした中古の弦は、とっておきましょう。弦が切れたときのバックアップになります。滅多にありませんが、本番中に切れたとき新品を張ると、弾いている最中にどんどん音程が下がってゆきます。
袋から新品の弦を取りだしたら、何線か間違えないよう、すぐ外した弦をしまいます。袋には交換時期を書いておきましょう。