[再掲] ペグがゆるむ現象への対策
2022/03/06
毎年乾燥する季節になると、ペグが戻る現象に悩まされる生徒さんが出てきます。気温差・湿度差は、人が思っている以上にバイオリンのコンディションに影響します。
ペグが戻ったら、バイオリンの置き場所や取り扱いを見直すサインだと思いましょう。
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ペグが戻りやすいのは、
(1)持ち主の取り扱いが適切でない
(2)売り主の調整が適切でない
のが原因です。
(1)バイオリンの持ち主が気づかうべきこと
①ペグソープを塗るべし
ペグには必ず、ペグソープ(ペグコンポジション)を塗りましょう。基本の「キ」です。
弦を取り外して塗りなおすのは手間がかかります。ペグで調弦をしている方は、弦を交換するとき必ず塗りましょう。
ペグが回りにくいことを楽器店や工房へ相談したばあい、良心的なスタッフ・職人さんなら、まずペグソープを塗り、様子を見るよう言ってくれます。ペグとペグ穴を調整する=削り直すのは、費用も時間もかかるからです。よほどペグとペグ穴が合っていないバイオリンでなければ、ペグソープで改善されます。(ペグソープを塗るのは、バイオリンを販売している楽器店なら、その場でできて当たり前です。)
ペグソープで不具合が解消できなければ、ペグとペグ穴を削ることになりますが、正規の工賃は安くはありません。しかし買ったところに持ちこめば、安く仕上げてくれるはずです。買ったばかりであれば、引き渡し前の調整不足といえます。
京都市内の大手楽器店で、生徒が50万円ほどの楽器を衝動買いしてきたことがありました。
楽器そのものは良いようでしたが、アジャスターが付いていないにもかかわらず、ペグがぱきぱき言って回りません。アジャスターもない。ペグもまわらない。のでは調弦できません。調弦できない商品を販売するのはおかしい。と生徒に伝えると、再度お店へ足を運んだようです。営業さんがペグソープを塗ってくれたとのこと。(職人さんはいないお店です。)
こちらで、ペグソープの塗り方をはじめ、弦を交換するときに した方がよいことを書いています。
バイオリン・ビオラの弦交換がなんとなく出来ている方も、手順が合っているか確認してみましょう。
②ペグは押し込みながら回すべし
調弦でペグを回すときは、押し込みながら回しましょう。ペグは先端が細く、根元が太くなっているので、普通に回していると穴から抜ける方向へ動いてゆきます。押し込みながら回していても徐々に浮いてきます。
大事な本番前は、正面にかかえて両手でペグを押し込んでおきましょう。ゆるみやすくなっていないペグでも、1mm程のめり込んだりします。
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2020.04.30 バイオリン・ビオラの調弦方法 (2)ペグでのやり方
③気温・湿度の変化がないようにすべし
楽器や弦は、思っている以上に、温度・湿度の変化に敏感です。赤ちゃんと同じと考えましょう。冬や夏に車のなかに置き去りにはしてはダメです。家の中でも、日光があたる場所、冷暖房があたる場所、朝晩冷える場所などは避けてください。
新品の弦が何度も切れ、ペグが頻繁に緩む生徒さんがおられました。
弦の交換は職人さんがしていて、駒に鉛筆芯の跡などもあり、見たところ問題なし。ペグも私が毎回しっかり押し込んでいる。
室内のバイオリンをおく場所は大丈夫ですか?とお尋ねしても、大丈夫とおっしゃいます。しかしペグはしょっちゅう戻ります。車に置き去りもしていないなら、おうちの中での気温・湿度の変化しか考えられないんです、というお話を何度もしていたら、ペグは戻らなくなりました。やはり置き場所でした。
戻る現象が起きていたころは、駒にあたっている部分の弦の巻き幅が広がっていましたが、それもなくなりました。
生徒さんが ”暑いところには置いていません” と言っていても、ニスが溶けていることがあります。松脂が溶けたこともありました。
ペグが戻る現象も、職人さんに調整をしてもらい、普段の取り扱いに注意すれば、必ず止まります。
バイオリンは、ほんの少しの暑い寒いや、湿気や乾燥に影響されるのです。
●電子チューナーは、微細な音程の調整につかう道具で、音程が大きく下がったときは役にたちません。
そのためペグの緩みにより音程が大きく狂ったばあい、どの程度ペグを巻き戻したらいいか分からなくなることがあります。
そうした場合のお助け道具として、調子笛(ピッチパイプ)というものがあります。4管だけのハーモニカのような器具で、バイオリン4弦の音がピンポイントで鳴ります。これを吹きながらペグを巻き上げていくと、弦を張りすぎてしまうことがなく安心です。
Hzが何種類かあります。442Hzのものを間違えないよう買ってください。
ピアノなどの鍵盤楽器を使ってもいいでしょう。
(2)バイオリンを引きわたす側がすること
ペグとペグ穴がぴたりと吸い付いているのが、調整が仕上がっている状態です。
最近は新品でも仕上がった状態で流通に乗ることが増えてきましたが、昔はそうではありませんでしたから、販売店や持ち主のところで使いづらさが発覚したときに職人さんが調整していました。
現在でも仕上がっていない状態で販売店に届く新品もあるし、中古は基本 買い主が現れるまで調整し直しはされません。
ペグの知識がない店舗でバイオリンを購入し、あとから工房で調整費を支払うことになった楽器店の生徒さんを見てきました。職人さんのいるお店で買っていれば、後からでも無料で調整してくれます。
バイオリン・ビオラを買うときは、「どれを」買うかより「どこで」買うかが大事だと申し上げてきましたが、ペグのコンディションにはそれが如実に表れます。
ペグとペグ穴の吸いつきが良好か、見分ける方法のひとつは、ペグの先端と穴の面が揃っているかです。ペグが穴に十分に埋まっていなかったり、飛び出しすぎているのは、ペグのコンディションがよくない可能性があります。
(a) ペグと穴がぴったり吸いついている
(b) ペグソープが塗ってある
(c) 回すのに力がかけやすい向きになっている
のが調整できているペグです。ストレスなくペグ調弦ができます。
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