ポジション移動に入る前に クリアしたいこと
2021/04/18
3rdポジションが使えるようになったら、「バイオリンが弾けるようになりました!」と堂々と言えますし、アマオケに入団することもできます。
バイオリンのさまざまな技法や知識は、生徒さんにより習得してゆく順番が違いますが、「バイオリンが弾けるようになりました!」と言えるのに、「基礎」としてクリアしていてほしい事柄があります。
1)目で読みとった音・音楽を再現する
2)耳で聴きとった音・音楽を再現する
3)リズム変奏
4)音と音のつながり方、音楽の流れ、休符の取り方
5)アンサンブル
6)半音と全音
7)運指と相対音感、音程の基本的な構造
8)調ごとの左指をおく位置。調が変わったときの変化の規則性
9)楽器の手入れ 調弦の仕方
ここで述べている(1)~(8)は
[1]音程・リズム・音楽をとらえる力
[2]バイオリンという楽器の構造・特性の理解
にあたります。
レッスンでは、初歩の生徒さんを指導しているとき、これらの項目の進度やバランスをいつも気にしています。また経験者さんでも出来ていない項目がある場合は、それをクリアしてもらえるようレッスンのカリキュラムを考えます。
1)目で読みとった音・音楽を再現する
いわゆる譜読み力です。
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2)耳で聴きとった音・音楽を再現する
いわゆる耳コピー力です。
3)リズム変奏
①♩=♫
チューリップや春の小川など4分音符だけの曲をつかい、♩♩♩♩というリズムを、♩♫♩♫ や ♩♫♫♩ というように変えます。8分音符2つに変える箇所をアトランダムにしたり、3連符も入れたりします。
②スラー
まず決まった場所にスラーを付けて弾き、なれたらアトランダムにスラーを付けてもらいます。
③弓づかい
4分音符は弓を長く使い、8分音符はコンパクトに使う、など。
4)音と音のつながり方、音楽の流れ、休符の取り方
テクニカルなことや譜読みができるのに、音楽的な表現ができないケースがあります。本人が問題を感じていないことが多いのですが、音楽的に弾けるほうが楽しいのではないかと思うので、そんな弾き方の提案をしてみます。
また休符のときに音を出さないことも、音を出すことと同じだけ大切です。
5)アンサンブル
先生の 2ndバイオリンと合わせる練習を、はやいうちから始めます。ピアノ伴奏や打楽器と合わせることもあります。生徒が興味を示すばあいは、生徒にも 2ndバイオリン・ピアノ・打楽器をしてもらいます。
6)半音と全音
いつ指をくっつけるべきで、いつ指を離すべきか。
置いて弾いてから正誤が明らかになるのではなく、出したい音程の位置がわかった上で置かなければなりません。
7)運指と相対音感、音程の基本的な構造
(a) 0=4であること
(b) 0→1→2→3と音程がひとつづつ上がり
3→2→1→0と下がる
(c) 指をおく場所を、手前にずらせば音程が上がり、
向こうへずらせば下がる
(d) 4つの指(番号)と、4本の弦の組み合わせ
耳コピーで簡単なスケールを弾いてもらい、バイオリン・ビオラという楽器の基本的な構造をおぼえてもらいます。
現代は神経伝達を攪乱するものが多いせいか、0→1→2→3 や 3→2→1→0の理解に時間がかかる生徒が増えています。2年生から始めて、中学生になっても0=4と分かっていないケースなどがありました。
テキストや教本を使うと「勉強」っぽい雰囲気になるので、耳コピーで遊びの延長を装います。
①0から始めるスケール inA inD inG
3つの調の順番は、生徒さんごとに変えます。
幼い子は低音をとらえにくいので、inGは後回しにします。
②1から始めるスケール inH inE inA(G線の1から)
左3指に♯が付くので、①より難易度があがりますが、(b)が理解しやすくなるスケールです。
③3から始めるスケール inC inG(D線の3から)
弦を3本使います。ハ長調が弾けるので、8)のスタートラインに立てます。
④3rdポジションで③をする inC inG inD
さらにアルペジオ、3度のスケール、スラーを付ける、と難しくしてゆきます。この頃になると自作のスケールプリントを使うこともあります。
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2023.11.28 バイオリン初心者さんの、目的別スケール練習
8)調ごとの左指をおく位置。調が変わったときの変化の規則性。
独奏曲・メロディラインを弾いているだけなら、耳コピー力でまにあいます。私はこの(8)を理解しないままスズキの10巻まで行ってしまいました。大人になってから譜読みが遅くて苦労したのは言うまでもありません。オケで弾きたいなら必須の知識です。
ほかの教室から移ってきた子供たちを見ていると、テクニカルな身体能力ではなく、譜読みがわからないため行き詰っているケースが多々あります。
最も多くの生徒さんに使う教材は ホーマン2 です。勉強っぽくなく色んな使い方ができて、楽しみながらできます。デュエット曲も多いためアンサンブル好きの生徒さんに好評です。
小野アンナが耐えられそう?、ふさわしそうな生徒さんには、小野アンナ を使います。
ホーマン2が難しい大人の初心者さんなどに学ばせるときは、手書きのスケールプリント を使います。1stポジションで、フラット1つからシャープ3つまで5つの調の、スケール/アルペジオ/3度のスケールです。
スケールは、全ての弦に4本の指が置けるよう書かれています。E線のC音はありません。
いずれの教材を用いても、やることは同じです。
まず inCから。
①移動ドの位置をおぼえ、1オクターブ上下
②4弦✕4指のすべての場所に展開
③inCの曲を、読みながら弾く
④4弦の画に、指をおく位置を書くペーパーテスト
inC → inG → inD → inA(シャープ3つ)まで出来たら、フラット系の長調。
ペーパーテストで、1枚の紙にFCGDAと並んだ指の位置が、規則的であることを見てもらいます。
長調同士の規則性が理解できたら短調。
長調と短調の規則性。短調の和声短音階、自然短音階と旋律短音階、という順で勉強します。
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9)楽器の手入れ 調弦の仕方
身体の使い方が上手でないばあい、4弦ともアジャスターを付けてもらいます。
ペグ調弦に移行してもらうタイミングは遅めですが、レッスン時の調弦は早いうちから本人に任せます。
アジャスター調弦の姿勢は、演奏フォームを整えるのに役立ちます。
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実際のレッスンでは、 2021.04.16 基礎とは の
[1]音程・リズム・音楽をとらえる力
[2]バイオリンという楽器の構造・特性の理解
よりも
[3]弾き方、姿勢、演奏フォーム、身体の使い方
に取り組んでいる時間のほうが長いです。[3]がどんな内容かは、「レッスンの引き出し 身体編」 カテゴリで少しうかがい知ることができます。
[3]を独力でするのは難しいので、家での練習は 好きな曲を弾く時間を多めに、とお伝えしています。バイオリンが楽しくなくなってしまうのは本末転倒です。